先週の中銀Weekが終わり、ドル/円は1ドル=114円台前半まで上昇しましたが、材料出尽くしから113円台前半まで下落し、113円台半ばで越週しました。

 15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)前の水準は113円台後半でした。

 米英欧日の中央銀行は購入資産の縮小ペースの加速(米)、予想外の利上げ(英)、縮小方針の表明(欧)や支援策の終了方針表明(日)など、軒並みタカ派に転じたことによって相場は上下に乱高下しましたが、結局、ドル/円は来年の米国の利上げ時期をにらみながらも、来年のためにリセットされたような水準に戻ってしまいました。

 主要国の中央銀行が、今年の終わり間近に明確にタカ派に転じたことは、来年もこのことが重要材料になるのは間違いありません。それでは、米英欧日の中央銀行はどのようなタカ派姿勢に転じたのか振り返ってみたいと思います。

12月15日 米国FRB(米連邦準備制度理事会)

  • テーパリング(量的緩和の縮小)のペースを1月から倍増し(月150億ドル→300億ドル)、終了時期の想定を2022年6月から3月へ前倒し。
  • 政策金利見通し(ドット・チャート)では、2022年の利上げ回数が前回の1回から3回に、2023年は3回で前回と同じ。2024年は2回と前回の3回から引き下げられた。
  • 「インフレは一時的(transitory)」との表現を声明文から削除し、「需給不均衡がインフレの押し上げに寄与し続けた」とインフレの持続性を強調する表現に改めた。
  • パウエルFRB議長は記者会見で、「テーパリング完了まで利上げは開始しない」「テーパリング続行中の利上げは不適切」との考えを示した。

12月16日 英BOE(イングランド銀行)

  • 市場の据置き予想に反し、0.1%から0.25%に利上げ。ポンドは1.32台後半から1.33台後半、ポンド/円は151円台半ばから152円台半ばに急騰したが、数時間後には元の水準以下に下落。

12月16日 ECB(欧州中央銀行)

  • コロナ危機で導入したパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)による新規資産購入(毎月700億ユーロ)を予定通り2022年3月末で終了することを決定。
  • 従来の資産購入プログラム(APP)は(200億ユーロ)、激変緩和措置として2022年4~6月は400億ユーロ、7~9月は300億ユーロに拡大し、10月以降は従来の200億ユーロを継続。PEPP終了で2022年4月以降の資産購入額は現在の半分以下に減る見込み。
  • 市場ではインフレへの懸念が高まる中、金融政策の正常化に動き出したとの見方が広がり、ユーロは1.13近辺から1.13台半ばに、ユーロ/円は129円手前から129円台半ばに上昇。2022年のインフレ見通しが1.7%→3.2%と大幅に上方修正されたこともユーロ買いを後押し。
  • しかし、ラガルドECB総裁が記者会見で「インフレは経済予測の対象期間中に目標以下に落ち着く見通し」「ECBが2022年に利上げする可能性は非常に低い」とハト派的な姿勢を示すと、ユーロは発表前の水準以下に下落。新型コロナ拡大による行動制限強化の動きも相場の重しに。

12月17日 日銀

  • コロナ禍で導入した資金繰り支援策である、

(1)CP・社債の計20兆円上限の買い入れ措置は、2022年3月末の期限通りに終了。
(2)金融機関に有利な条件で貸出しの原資を供給する特別オペは、2022年9月末まで半年間延長。

 このように米英欧日はタカ派に転じました。ドルやユーロ、ポンドはいったん上昇しましたが、材料出尽くしやほぼ予想通りの決定への安心感からその後相場は下落しました。しかし、来年の金融政策の方向性が示されたことから、来年もこの材料への期待や思惑によって相場は動きそうです。