2022年見通し:締め付け政策下でEC業界の発展を予想、クラウドは急成長へ

 中国政府による規制強化と利益下押し圧力を受けた投資家のリスク許容度の低下を受け、大手ネット銘柄の株価は2021年に大きく下落した。ただ、BOCIは続く2022年のEC(ネット通販)セクターに対して楽観的。ショート動画ECの台頭による競争激化やマクロ経済の減速による小売売上高の減速を見込みながらも、ECセクター全体の堅実な発展を予想し、クラウドビジネスに関しては力強い伸びを見込む。一方、ネット企業に対する中国当局の締め付け政策については、ある程度対処可能なレベルに落ち着くとしながらも、政策の影響そのものは続く見通しを示している。

 BOCIは国内の規制強化策について、一般規制の枠組み作りが終わり、2022年には細則や実施規則が発表されると予想。広告、EC、フィンテックなど、上場企業の各種ビジネスへの影響が続くとみている。半面、企業側が政策に積極的に対応することで、ダメージの度合いは対処可能なレベルに落ち着くとの見方。また、最大手を対象とした独占禁止法の適用で、ECの加盟店が多様化し、JDドット・コム(09618)などのプラットフォームでは第三者GMV(流通総額)の拡大が期待できるとした。半面、中国国内の個人データ保護法や米国のHFCAA(外国企業説明責任法)などの施行で中国ネット企業の米株(ADR=米預託証券)の上場廃止リスクが高まっている現状を指摘している。

 一方、国内での独禁法の適用を受けたプラットフォーム間の相互接続の促進は、消費者の選択肢を広げる。より良い消費者体験を提供することも可能となり、トラフィックの拡大というプラス効果が期待できるという。

 短期的にはショート動画ECが有望。ショート動画は中国で8億8,800万人のユーザーを抱える最人気のエンターテインメント分野であり、同ECビジネスは2022年も成長の勢いを維持する見込み。同時に、EC業界の一段の競争激化につながる可能性が高い。

 BOCIはEC業界全体の着実な発展を見込む。2022年の最初の数カ月は個人消費の低調が続く上に、パンデミックによるオンライン浸透率の促進効果も鈍るとしながらも、農村部のEC普及率の高まりと消費アップグレードを予想(農村部のネット普及率は2021年6月末に59.2%)。中でもライブストリーミングECが活況を維持し、EC市場全体の着実な成長を支えるとみている。

 また、企業のデジタル化や全国的な5Gカバレッジの加速を背景に、ネット企業が手掛けるクラウドビジネスが、従来のECビジネス以上に高い伸びを示すと予想する。ほかにCGP(コミュニティーベースの共同購入)ビジネスは、政府による規制や初期的な散財局面の収束で、理性的な発展段階を迎えたと指摘。この点もプラスに受け止めている。

 個別では、BOCIは規制リスクが相対的に低く、向こう1-2四半期の業績堅調が見込めるJDドット・コム、百度(09888)を有望視している。