前回は商品先物取引における「価格」についてお伝えしました。取引ツールの相場表やインターネット・新聞等で目にする価格が、各銘柄、一体どれくらいの数量の価格なのか?ということでした。

主な銘柄では、金は1グラム、原油は1キロリットル、天然ゴムは1キログラム、とうもろこしは1トンでした。(第3回 商品先物取引入門講座「呼値(よびね)とは?」参照)

今回は、先物特有の仕組みとも言える「限月」について触れてみたいと思います。

「限月」は「げんげつ」と読み、「取引を行うことができる期間」を表します。例えば以下の金の相場表の例にある「17/04」という限月(17年4月限。読み方は17ねん4がつぎり)、であれば、2017年4月25日(火)の定められた時刻まで取引ができることを表しています。

(当社での取引の場合はその前日となる2017年4月24日(月)までとなります。 当社における「最終決済日カレンダー」はこちらをご参照ください。なお、本稿では取引の期限について“取引所の納会日”を元に作成しております)

金を例に挙げれば、以下の相場表のとおり、6つの限月が同時に取引されていることがわかります。(つまり、金と一口に言っても6つの価格がある、ということになります)

以下より、今回のテーマとした「限月と先限つなぎ(さきぎりつなぎ と読みます。詳細は後述する先限つなぎのチャートの欄でお伝えいたします)」についてさまざまな要素を解説しながら、6つある限月のうち、どの限月の価格に注目するべきか?という点についても触れていきたいと思います。

図:限月・納会・発会・限月毎の出来高の傾向、および先限の移り変わりについて

出所:マーケットスピードCXの相場表を元に筆者作成

  • 「それぞれの限月の呼び方」
    取引所のルール上、金は常に“6つの偶数月の限月”の取引が行われています。相場表の最も左にあるものを1番限(いちばんぎり)と読みます。この例では17年4月限(ぎり)を意味する「17/04」と書かれています。ひとつずつ右にいくにつれて、2番限(にばんぎり)、3番限(さんばんぎり)・・・となり、最後に18年2月限を意味する「18/02」と書かれた6つ目の限月を6番限(ろくばんぎり)と言います。
    特に1番限を当限(とうぎり)、6番限を先限(さきぎり)と読むことが多いです。
  • 「現在取引中の限月の納会」
    6つの限月について、②のとおり上から17年4月限、次に17年6月限・・・一番下に18年2月限、のように並べております。
    いずれ納会(取引期限に該当する最終取引日を納会(のうかい)、納会日(のうかいび)と言います)を迎えますが、その納会のタイミング(納会日)は、各限月の月日が示すとおり、17年4月限は17年4月25日まで、17年6月限は17年6月27日まで・・・18年2月限は18年2月23日までとなります。
    先述の「それぞれの限月の呼び方」と合わせれば、1番限よりも2番限、2番限よりも3番限・・・と当限から先限にかけて、2か月ずつ取引できる期間が長くなっているとも言えます。
  • 「将来取引が始まる限月の発会と納会」
    将来、現在取引中の限月のうち当限が納会を迎え、今度は新しい限月が生まれます(発会(はっかい)と言います)。
    上記の例では、目先17年4月25日に17年4月限が納会を迎え、同日に18年4月限が発会します。
    金の限月は偶数月と定められているため、2か月に1回、納会と発会があり、上記の例で言えば、1番限(当限)、2番限・・・6番限(先限)において、1番限は17年4月限から17年6月限に、2番限は17年6月限から17年8月限・・・6番限(先限)は18年2月限から発会した18年4月限へと移り変わります。
  • 「限月ごとの出来高の傾向」
    上記のとおり、先限(6番限)が他の限月に比べて出来高が多いことがわかります。
    価格に注目したり取引をしたりする場合、特別な理由がある場合を除き、出来高が多い限月を選択する場合がほとんどであると考えておりますが、その意味では、この出来高の最も多い傾向にある先限(6番限)は、6つの中で最も金価格の情勢を映し、最も取引に適した限月であると考えることができそうです。
    つまり、6つのうち注目する価格は「先限(6番限)の価格」ということになります。
  • 「発会に伴い移り変わる先限」
    先述のとおり、2か月に1回、納会・発会に伴い、先限となる限月が移り変わっていきます。
    ここで注意したいのは、注目したり取引したりしているその時の先限が、2ヶ月以内に5番限に移る、という点です。上記の例であれば、18年2月限が4月25日(火)午後までは先限であるものの、同日夕方には(17年4月限の納会に伴い)18年4月が発会し、これにより18年4月限が先限(6番限)に、18年2月限が5番限なります。
    仮に、4月25日前にその時の先限である18年2月限の建玉を保有し、そのまま4月25日を過ぎた場合、保有している18年2月限は“5番限”になります。
    先のとおり、6番限(先限)と5番限の出来高の差は大きいため、5番限を決済しよとして注文を出しても、相対的に流動性が低い点より、不意に不利な価格で決済となる可能性もあると考えられます。
    「先限つなぎ」のチャートは、その時の先限をつなぎ合わせたチャートであるということです。

図:東京金「先限つなぎ」(日足)で参照される限月

出所:マーケットスピードCXの相場表を元に筆者作成

流動性の観点から、5番限の建玉を持たない(保有する建玉が5番限になる前に決済する)ということは、リスク管理にもつながる大事な点であると思われます。

そのため、「限月」を理解することは重要であると思われます。

※2017年4月12日時点