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2012年米国経済・株式相場の見通し(3)
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

2012年米国経済・株式相場の見通し(3)

2012/2/27
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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これは去る1月28日、横浜にて開催された楽天証券新春講演会2012で講演させていただいた内容を要約したものです。

私が今年最も魅力的と見ている第三の投資対象は金です。我々が運用するファンドでは2009年春、初めて金への投資に踏み切りました。当時、金価格は1,000ドルに乗せる手前でした。当時金への投資に踏み切った理由は当コラムにも書きましたのでご参照下さい。

当時アメリカはデフレを乗り越えるため、ドルを印刷して財政出動していました(具体的には財政出動に伴う国債増発分をFRBが購入し、対価であるドルを供給)。これによってドルの価値が下落する事は容易に予想できましたが、果たしてどうすればそのリスクをヘッジできるか。我々が考えた選択肢は「ドル・円を売る」か、「金を買う」か、でした。では何故、「ドル・円を売る」選択肢を選ばなかったか? それは日本の財政状況が悪かったからです。

自国通貨を発行している国は国債の返済に困ったとしても、いざとなったら投資家に自国通貨を渡せば解決します。日本のようにあれだけ中央銀行が頑なな国であっても、最後の最後デフォルトか通貨印刷か、と究極の選択を迫られたら通貨印刷を選ぶでしょう。そこまで行かなくても、円高・デフレがこれだけ日本経済を傷め、一日100人近くもの自殺者が出ている最も大きな理由が経済状況という中で、いつまでも日本だけ量的緩和に二の足を踏み続けると考えるのは不自然です(実際この講演から約1カ月後の2月下旬、日本銀行は初めて物価目標の設定を発表しました)。

要するに、状況によって人類が自由に発行できてしまう通貨ではヘッジにならない、というのが我々の出した結論でした。結果的にあれから円はドルに対して17%上昇、一方で金価格は77%上昇していますから、この選択は正しかったという事になります。それではこの先はどうでしょうか? 引き続き金は魅力的な投資対象だと考えています。何故なら世界的な財政の悪化(=通貨が印刷されやすい状況)はまだまだ継続中であるからです。

とりわけ注目に値するのは欧州の状況です。これまで欧州はその債務危機に対して、大袈裟な発表、問題先送り、遅い対応、隠蔽体質と、出来るだけカネがかからないように済ませたいという魂胆が見え見えの対応を繰り返してきました(「大き過ぎて潰せない」再び(2011年9月26日)参照)。メルケル首相とサルコジ大統領が会談というニュースだけでマーケットは反発、大袈裟な声明発表でしばらく時間は稼げるものの、具体性、実現性に欠けるものである事が明らかになるにつれ問題がさらに悪化していく、というサイクルを何度も繰り返してきました。

しかし去年11月、ECBにドラギ総裁が就任した事によって変化が見られるようになりました。私は欧州債務問題は大きく、財政か金融か、又はその組み合わせで解決するしかないと考えています。これまでECBの姿勢は通貨の信認維持が最優先で、債務問題の解決には極めて消極的でした。しかしドラギ総裁が就任してからECBはいきなり政策金利を引き下げ。翌月には金利1%で3年物資金を無制限供給という大胆な策を打ち出したのです。この資金供給は2月末にも実施される予定です。

今後状況が悪化すれば、条件を緩和する事によってさらにこの資金供給を拡大する事も可能です。金利を引き下げる事もできますし、期間や満期を延長する事もできます。ECBは担保要件をシングルA以上としていますが、これをトリプルBに引き下げる事も可能です。欧州債務危機が改善に向かうまで、この財政の問題を、金融でサポートしようという訳です。ドラギ総裁就任によって明らかに金融面でのサポートが大きくなったと言えます。

3年とはいえ、この間はユーロが印刷されている状態になります。そう、2009年のアメリカ同様、債務問題解決のために欧州も通貨印刷を積極化し始めているのです。ただ、欧州債務危機が既にユーロ下落要因でしたから、問題解決のための通貨印刷であればユーロ下落要因にはならないかもしれません。アメリカもまだQE3(第三弾量的緩和)実施の可能性がありますし、日本もいつまでも何もしない事はないでしょう。こうして考えると、世界的に人類が自由に発行できてしまう通貨の価値が実質的に下落していく状況に、まだまだ変化はないと考えるのが自然です。

金価格は株価指数や為替と違い、かなり大きな動きをします。1,000ドルから1,900ドルに上昇し、その後1,500ドル台まで下落した後1,700台ドルという変動に耐えられないという方もいらっしゃるでしょう。しかし金の価格変動というのはそんなものです。金に投資するのであれば予め、短期間に200-300ドル動いても気にならないくらいの覚悟が必要だと思います。重要なのはそういった目先の値動きではなく、世界的に悪化している財政状況に改善傾向が見えてくるかどうかという事なのです。

(2012年1月28日横浜にて)

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