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金融ショックは何故起こるのか?(1)
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

金融ショックは何故起こるのか?(1)

2011/11/24
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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皆さんはこんな新聞やTVの市況を見たり聞いたりした事はありませんか?

「ヘッジファンドが買ったから上がった」「売りを仕掛けたから下がった」

率直に申し上げて、これらは日本でのみ見られる市況の表現で、海外で殆ど見かける事はありません。そして当事者の方には申し訳ないですが、これらはかなり残念な表現と言わざるを得ません。

理由として第一に、ヘッジファンドは世界に何千もあります。中には下落相場でも買っているヘッジファンドがある筈です。それでもヘッジファンドの売りが理由で下落していると報道するのであれば、過半数のヘッジファンドをリアルタイムで取材したという根拠がなければならないでしょう。数からしても秘密保持原則からしても、これは明らかに非現実的です。第二に私の経験では、例えば相場が大きく下落するのは、誰かが売りを仕掛けている時というよりも、買う人が殆どいなくなっている時です。相場が大きく下がるとよく投機筋のせいにされますが、殆どの場合、相場下落の本質は買い手が不在である事、即ち「貴方が買わない(何もしない)から」なのです。

2008年アメリカの金融危機や、現在進行中の欧州債務危機においても同じです。確かに中には、2008年の金融危機時、住宅ローン証券の空売りで利益を上げたポールソン氏のような、分かりやすい例はあります。しかし当時、そもそも住宅ローン証券を空売りする手段など殆ど無く、ポールソン氏のケースも証券会社にわざわざそのような商品を限られた金額分だけ作ってもらって空売りできたのが実情です。住宅ローン証券全体の相場が急落となったのは、誰かが売りを仕掛けたというよりも、下落の過程で買い手が殆ど現れなかったからなのです。

ここ数年続いている円高を例に取ってみましょう。アメリカでは金融危機を受けて2009年初に約70兆円に上るオバマ景気対策と共に、約150兆円に上る第一弾量的金融緩和(QE1)が実施されました。さらに去年は約40兆円に上るブッシュ減税延長と共に、約50兆円に上る第二弾量的金融緩和(QE2)が実施されました。アメリカ政府は国債を発行して財政で国民にお金をばら撒きますが、その国債はFRBが購入したので、結果的にドル札を印刷して配ったのと同じです。恐らくアメリカ国民一人当たり合計50万円ほどのドル札が印刷され、「為替市場で売れるほど」ドルを十分持つに至ったのです。ドルが余ったから売ったとも言えますし、需要と供給の関係でドルが下がったとも言えるでしょう。

一方日本はどうでしょう? 日本政府は相変わらず「円高は投機のせい」と勘違いして円売り介入を続けています。この勘違いは外国為替資金特別会計に発生している40兆円もの為替損という巨額の代償となって表れてきています。それでは円高の本当の理由は何なのでしょうか?簡単に言えば、皆さんが為替市場で、上記のドル売りに立ち向かうほど十分な円売りをしないからです。しかしそれは皆さんが、為替市場で売れるほど十分な量の円を持っていないから。だから本来は、日本政府は円高を投機のせいにするのではなく「日本国民が円を売らない(又は何もしない)からだ」と自国民を批判しなければならないのです。そうなれば皆さんは即座に日本政府に反論するべきです。アメリカもヨーロッパも中国も自国民に十分な通貨を与えている中、日本政府だけは通貨を与えてくれないからだ、と。

2008年アメリカの金融危機や、現在進行中の欧州債務危機でも、いまだにヘッジファンドが仕掛けたから等の表現が散見されます。欧州債務危機においては、いち早く投機筋の仕掛けが原因と誤解したフランス、イタリア、スペイン等が金融銘柄の空売り規制を実施しました。しかし当然の事ながらそんな事で金融銘柄の下落が止まるはずがありません。何故なら金融銘柄の下落はそもそも、誰かが空売りしているからというよりも金融銘柄を買う人がいなくなっているからであり、それは当該金融機関のファンダメンタルズが問題だからです。ファンダメンタルズを改善しない限り、空売り規制のような小手先の対応をやっても全く問題の解決にならないし、短期的に効果があったように見えて根本的な欧州債務問題の解決が後手後手に回ったという点では、為替介入と同様、むしろ有害なのです。

市場が正常に機能している時は、相場が下落しても、実はその相場下落自体が問題の解決につながるケースが殆どです。例えば景気の弱い国の通貨が下落する事によって輸出競争力が高まり、延いては景気回復に貢献します。住宅価格は下落する事によってより多くの人が購入できるようになり、自然に下げ止まります。これが市場の自動調節機能です。しかし中には、相場の下落が他の問題を併発してしまい、金融市場に大きなショックとなって表れてくる事があります。しかしこれは市場というシステムが問題なのではなくて、実は正常な市場の機能を阻害する何かが存在しているからなのです。2008年アメリカの金融危機や、現在進行中の欧州債務危機がこれに当たります。それではこれらの金融ショックは何が問題で市場の自動調節機能が働かなくなってしまったのでしょうか。誰かが売りを仕掛けたから、と勘違いを繰り返し、この市場の本来の機能を阻害する問題の本質を理解しなければ、いつまでたっても金融ショックは繰り返される事でしょう。次号ではその本質について書かせていただきたいと思います。

(2011年11月23日記)

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