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誤診の連続で治らない病気~円高
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

誤診の連続で治らない病気~円高

2011/8/3
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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為替介入がいかに愚策かについては、為替介入は愚策(2009年11月30日)口先介入も、非不胎化介入も、為替介入は愚策(2010年9月2日)為替介入(米国債購入)vs 日本国債購入(2010年9月22日)など、このコラムでも再三にわたってご説明してきました。同時に2009年以降、円高の主因は日米欧のマネー供給量の差である事は日頃出演させていただいているテレビやラジオにおいても図を示して繰り返しご説明してきました。にもかかわらず円高を投機のせいだと勘違いしている一部メディアの評論や新聞の社説、そして輸出企業を中心とする財界は「為替介入を実施せよ」の大合唱。政府も円高を投機のせいだと勘違いしたのか、又は「何もしないのか」という世論を気にしたのか、2010年9月、日本はまたもや介入の蟻地獄に突入してしまいました。そして納税者負担となる為替損がどんどん膨らむという、過去と全く同じ過ちが再び進行中です。

さらに大震災後の円高進行時には経済財政担当相が「投機筋の風評による円高であり大変不見識だ」と発言した、とのニュースが流れました。円高が投機によるもの、と判断するのは医者が誤診しているのと同じです。確かに本当に円高が投機によるものであれば為替介入は効果があるでしょう。一時の頭痛に鎮痛剤を処方するようなものですから。しかし繰り返し申し上げてきたように、私の診断では、2007年に始まっている円高に殆ど投機性は見られません。むしろもっと深刻な病気、日米欧のマネー供給量の差がそのまま円相場に表れてきている事は明らかです。鎮痛剤が一時的に効いたように見えてしまうがために、根本的な治療がおろそかになってきた点では為替介入は害とも言えます。さらに鎮痛剤も常用していると次第に効かなくなるし、副作用も表れてきます。その副作用とは外国為替資金特別会計に発生している、40兆円近くに上ると見られる損失です。本来アメリカ国民が負担すべき40兆円分を日本の納税者が肩代わりする形になっている事を理解している人は、今も多くないのではないでしょうか。

しかし上記経済財政担当相発言の翌日、再び誤診を受けた治療(為替介入)は実施されました。3月18日、日本は為替介入を通じて米国債、欧州国債を購入。日本があれだけ大変な状況にもかかわらず外国政府の赤字をファイナンスするという、非常に違和感のある政策を実行したのです。決定のスピードといい、復興のためにいくら必要でも自国の国債はなかなかファイナンスしようとしないのとは大違いです。

そして今、再び誤診がなされています。日本のニュースでは円高の要因として「アメリカの債務上限引上げが難航しているから」と報じられています。確かにそれはきっかけの一つだった可能性はあります。しかし、もしそれが円高の要因だとすれば、債務上限引上げが決まったら、ドル・円は上昇しなければならない筈ですね。ちょうど本稿執筆の最中に、懸案であった債務上限引上げに関する法案が上院を通過、即日オバマ大統領の署名を経てようやく成立に至りました。それなのに私の目の前のスクリーンでは、ドル・円相場はまだ史上最安値に近い77円スレスレで取引されています。従って「アメリカの債務上限引上げが難航しているから」も誤診であったという事は明らかなのです。

円高が進行する度に、日米欧のマネー供給量の差という本質を避け、その時によって一般の人が納得しそうな理由がメディアで挙げられる。こんな状況だと、もしかすると財務・金融当局が責任を追及されないために工作している可能性まで考えてしまいます。一方、誤診の代償は小さくありません。既に外国為替資金特別会計には日本の納税者負担となる40兆円近くの損失が発生しているのです。皆さん、これら誤診の連続にはもう懲り懲りではないですか?

(2011年8月2日記)

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