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口先介入も、非不胎化介入も、為替介入は愚策
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

口先介入も、非不胎化介入も、為替介入は愚策

2010/9/2
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーとして活躍する堀古英司氏による米国市場レポート「ウォール街から~米国株の魅力~」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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最初にはっきりさせておきたいと思います。私は金融危機が始まってからのこの3年間に進んだ約30%の円高(ドル120円→85円、ユーロ160円→110円)は日本人の命を脅かす大問題であり、本当に何とかしないといけないと思っています。特に生産性が急上昇した等の理由もなく、日本人の賃金が実質的に30%も上昇しているのです。当然日本企業は外国人を雇うでしょうし、外国の企業は日本人を雇わなくなるでしょう。毎日100人近くの人が自ら命を絶ち、その多くが経済問題である状況は早急に何とかしなければなりません。
先々週、円高対策についてのテレビ番組で私は、「政府・日銀は既存の枠組みにとらわらず、クリエイティブな発想をするべきだ」と申し上げました。人の命に比べれば、既存の枠組みの重要性など二の次でなければならない、という意味です。

だからと言って、多くのメディアも専門家と呼ばれる人達も、その処方箋がなぜ為替介入となるのか、私には到底理解できません。為替介入がいかに愚策かは、去年書かせていただいた通りです(為替介入は愚策(2009年11月30日))。しかし市場をよく知らない人たちの主張が一般に広がってしまい、世論を気にした政府が仕方なく為替介入を実施してしまうという過去の過ちが再び繰り返されかねない、今はそのような危険な状態だと思っています。

私は1989年から1999年まで、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)の本店とニューヨーク支店のドル・円為替ディーラーでした。当時東京銀行のシェアは東京市場でダントツでしたので、市場の厚みをより正確に知る事が出来る立場にありました。もちろん当局による為替介入も何度も経験しました。その経験を踏まえて一言で言うと、市場の厚みは、一般の人が考えている何十倍も、何百倍も厚いという事です。もちろん為替介入が一時的に効く事はあります。しかし効かない時はいくら大規模の介入をやっても全く効果はありません。為替市場は毎日フラフラ動くので、いとも簡単に動かせると思っている人が多いかもしれません。しかしそれはとんでもない誤解です。

今の為替市場で効くような介入をやろうと思えば、恐らく数10兆円単位の資金が必要でしょう。またそれは同時に、日本が今回の「戦闘」に使える最大金額にも近いと思います。即ち、弾倉に入っている銃弾はせいぜい数10兆円です。一方で敵である為替市場の出来高はBISの発表によると1日で350兆円です。しかも相手は毎日新しい弾倉を補充できるのです。短期的に市場との戦いに勝つ事があっても、時間の経過と共に相手に残りの銃弾数を見透かされ、遅かれ早かれこの戦闘に敗れるのは目に見えています。この戦闘に敗れてきた結果が、現在外国為替資金特別会計に発生している30兆円もの含み損失なのです。

私はよく為替介入を、「勉強もしないで成績表だけ書き換えるようなもの」と例えます。為替相場も成績表も「結果」であって、その場だけインチキをしてしのぐ事ができても、後で必ず痛い目に遭う、という意味です。そもそも即効性のある市場対策など、ロクなものはないのです。既にここまでの説明で、口先介入に意味がない事はご理解いただけると思います。即ち、「為替介入をやるぞ」と言った所で、市場には「それじゃかかって来いよ」と言われるだけなのです。

それではなぜ非不胎化介入も愚策なのか。私が言いたいのはそもそも、「円を売るのはいいが、何故ドルを買わなければならないのか」という事です。特にアメリカやユーロが、これだけ通貨を印刷してきている時に、です。日本は介入して得たドルで米国債を購入します。するとアメリカの中長期金利が低下して、アメリカ国民が本来負担すべき利払い負担が減少します。これは実際に2003-4年、日本が大量のドル買い・円売り介入を実施して起こった出来事です。しかし日本がこれだけ苦しい時に、何故また他国の国債を購入して、本来アメリカ国民が負担すべき利払いの一部を日本人が負担しなければならないのでしょうか?

他国の国債を買うくらいであれば、自国の国債を買えばいいのです。前出のテレビ番組で具体策を聞かれ、私は「まず、日銀による国債購入を大胆に増やすべきだ」と答えました。思い付く円高対策はたくさんありますが、これはまず最初のステップです。

ここからが「既存の枠組みにとらわれないクリエイティブな発想」です。それは、そもそも政府と日銀は夫婦のようなものだという事です。夫が債券を発行して、妻がその債券を買っている限り、その家計の借金はチャラです。少なくともそれで、将来その家計が他人に迷惑をかけるような心配はありません。あとは夫婦喧嘩でも何でもして、又はお互いの機嫌の良い時を見計らって解決してくれれば良いのです。本当、いつでも結構です。最近よく政治家による日銀批判を目にします(日銀も政府に言いたい事は山ほどあるでしょう)。しかし日本国民はそのような夫婦喧嘩に付き合う必要は全くないのです。夫婦喧嘩は後にして、取り敢えずやらなければならない事だけ今やってもらえれば良いのです。

日銀が国債を購入する事は、市場に流通している国債を通貨に入れ替える事を意味します。国債は満期も利子も付くのに対し、通貨には満期がないので返済する必要はないし、もちろん国民は利子も負担する必要もありません(夫婦間で利子のやり取りはされると思いますが、国民には関係ありません)。国の借金増加が気になる昨今、通貨ってとても便利なものだと思いませんか?ただ余計な通貨が世の中に流通してしまうので、現金を持っている人にとっては実質的に価値が下がり、マイナス金利と同じような効果になります。そんな事をしたら為替市場で円が売られてしまう、とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。しかしそのような方に今一度お聞きします。「円高で困っているとおっしゃっていたのではないのですか」と。

(2010年9月1日記)

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