資源価格の急騰で、インフレ懸念高まる

 10月6日、ニュージーランド準備銀行は7年ぶりの利上げに踏み切りました。また、英国イングランド銀行の11月の利上げ観測が急速に高まってきています。12月の連続利上げも織り込まれようとしています。

 パウエル議長は早期の利上げを否定しましたが、マーケットでは来年の利上げを2回織り込んでおり、利上げ観測は消えていません。これらの動きは、サプライチェーンの混乱や原油・天然ガスなどのエネルギー価格の急騰によってインフレの長期化懸念が強まっているのが背景です。

 日本経済新聞によると、83カ国の中央銀行の2021年の政策変更は、利上げ32カ国、利下げ8カ国と利上げが大幅に上回っています。2020年と比較すると、2020年は新型コロナウイルスの感染が急拡大したため、利上げ9カ国に対し、利下げは71カ国でした。

 このように2020年は景気対策のため利下げが大勢でしたが、2021年に入ると、ワクチン接種率の上昇や経済規制の緩和による需要の回復によってインフレが起こり、世界の金融政策の状況が一転しました。

 パウエル議長がオンライン会合で指摘したようにインフレが長期化すると、この利上げ状況は来年も続き、むしろ利上げ回数や利上げする国が増えることが予想されます。

 その中で日本は、9月の物価が1年半ぶりにプラスに浮上したとはいえ、まだ0.1%であるため、金融引き締めへの政策変更にはまだまだ時間がかかりそうな状況です。

 金融緩和から正常化を進める各国の金融政策との違いが、より鮮明になってきており、円安けん制発言だけではブレーキの力が弱いかもしれません。

 政策の違いによる意図せざる円安を防ぐためにも、日本も金融政策の次の一手を示唆する必要が高まってきています。黒田総裁の記者会見ではこのような観点からも注視する必要がありそうです。