政策リスクもクラウド化やSaaS浸透が追い風、リスクリワードに魅力
BOCIは投資家と中国のソフトウエア・セクターに関して意見交換を行った。投資家らはクラウド化やSaaS(Software as a Service:クラウドサーバー上のソフトウエアをネット経由でユーザーに提供するサービス)の浸透、社内システムからの切り替え需要などを追い風にセクター全体の構造的成長を総じて楽観視。半面、ネットサービスやオンライン教育、ゲームを標的とした中国政府の監督強化が引き続き主なリスク要因になるとの見方が目立ったという。BOCIは改めて、セクター全体の株価の先行きに楽観見通しを示し、6カ月タームのリスクリワードが魅力的な水準にあると指摘している。
BOCIによると、中国のテック投資家は一般的に、香港H株より本土A株に重きを置き、ソフトやハードより、半導体銘柄を重視する傾向が強い。投資家との意見交換では、SaaSプロバイダーの微盟集団(02013)、総合ソフトウエア・情報サービスの中軟国際(00354)、有力光学部品メーカーの舜宇光学科技(02382)に対する質問が多く、半導体不足やスマートフォンの需要低迷、ソフト企業に対する規制リスクなどが懸念事項として挙がったという。また、一部の投資家はファーウェイの独自OS「Harmony」テーマ株としての再評価期待から、中軟国際に注目していることが分かった。
一方、中国国内のクラウド化やSaaS利用へのシフトといった業界全体の構造的トレンドは、ほぼ投資家らの共通認識。中国のSaaS業界は段階的に米国に追いつきつつある。また、向こう5年というスパンでは、ソフトウエアは基本的に、ハードウエア以上に力強い成長を遂げる可能性が高い(ハードの中ではAR/VR機器や自動車関連機器などはアウトパフォームする可能性がある)。さらに詳細を見ると、投資家はおおむね、キングソフト(03888)のオフィスソフト「WPS」や、金蝶国際ソフト(00268)のクラウドサービス「金蝶雲」、微盟集団のSaaSビジネスに対して楽観的。株価バリュエーションについては、◇1-2月に見られたSaaS銘柄のピーク水準は持続性に欠ける、◇リスクリワードはすでに魅力的な水準となり始めている、◇金蝶国際ソフトにはやや割高感があるという点に、投資家の大半が同意したという。半面、中国政府の監督強化策は引き続き、セクター全体の主な不確実要素となっている。
BOCIはキングソフト、微盟集団、中軟国際の株価の先行きに強気見通しを継続し、金蝶国際ソフトには中立見通しを付与。中国有賛(08083)には慎重見通しを据え置いた。トップピックはキングソフトと微盟集団。キングソフトに関しては米中対立やWPSのエコシステムの改善、マイクロソフトオフィスと比較した価格競争力(70%安)などから今後は政府機関・国有企業だけでなく、民営企業や消費者にも浸透するとの見方。微盟集団に関しては2021年上期決算の相対的な堅調や監督強化策の影響が限定的である点を前向きに評価し、香港上場のSaaS銘柄の中で最良のポジションにあると指摘した。