急成長する中国のクラウドサービス、通信キャリアの存在感が拡大へ

 成長著しい中国のパブリッククラウド・サービス市場で、通信キャリアの存在感が増している。デルタル化や「クラウドとネットワークの融合」「エッジコンピューティング」に対する旺盛な需要と、データセキュリティ要件の厳格化が背景。BOCIは通信キャリア最大手のチャイナ・モバイル(00941)を通信セクターのトップピック銘柄とし、その理由として現在株価の魅力的なバリュエーションと、利益見通しの上方修正余地を挙げた。また、通信キャリアのビジネスとの密接な関係性や企業向け市場での存在感を理由に、通信支援サービスの中国通信服務(00552)、通信機器メーカーの中興通訊(00763)の株価の先行きに対しても、強気見通しを付与している。

 中国のパブリッククラウド・サービス(不特定多数のユーザーにクラウド環境を提供する)市場の売上高は2020年に前年比85%の伸びを記録した。産業デジタル化に伴う旺盛な需要が背景。新型コロナの影響で、世界市場が13%増に減速したのとは対照的だった。通信キャリアを個別にみると、チャイナ・モバイルの2021年上期の同サービス収入が、業界平均を大きく上回る前年同期比118%増。チャイナ・テレコム(00728)も100%超の伸びを達成し、上期の売上高は140億元。3大キャリアの中でトップだった。

 米調査会社IDCの7月下旬のレポートによれば、中国国内のクラウド市場におけるチャイナ・テレコムのシェアは8%で、業界4位。アリババ集団(09988)の40%、テンセント(00700)とファーウェイの各11%に続く4位に浮上したという。BOCIは2021年末までに、テレコムがトップ3入りを果たすとみる。

 通信キャリアのクラウドビジネスの成長エンジンとなるのは、「クラウドとネットワークの融合」と「エッジコンピューティング」(端末もしくはその周辺のエッジ環境でのデータ処理)という2点。うち前者は中国が発展を目指す「新インフラ」の基盤であり、IDC(インターネットデータセンター)などのリソースプールに接続可能な独自のファイバー伝送インフラを大々的に展開する通信キャリアに有利となる。BOCIの推定では、3大キャリアのチャイナ・テレコム、チャイナ・ユニコム(00762)、チャイナ・モバイルのIDC処理能力シェアは、2021年上期に31%、21%、27%だった。

 BOCIはチャイナ・モバイルについて現在株価が2021年予想PER(株価収益率)で7.3倍にとどまり、配当利回りは8.2%の高水準にあると指摘。さらにこの先の利益見通しの上方修正余地が大きいとしている。現時点では2021年予想EPS(1株当たり純利益)、予想EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は前年比わずか4.5%増、5.4%増にとどまるという。

 一方、セクター全体の評価に関わる潜在リスク要因としては、パブリッククラウド事業の採算性がまだ実証されておらず、急速なテクノロジーの進化に対応するために継続的な投資が必要となる点を挙げている。