先週はドル全面高となりました。
18日に公表された7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨で、テーパリングについて「ほとんどの参加者は、年内開始が適切と判断した」と示されたことから、9月にもテーパリングを決定するのではないかとの観測が強まったことが背景にあります。
ドル/円は、1ドル=109.50~110.50円の中心レンジを下方にブレイクしそうな気配でしたが、このドル高によって再び110円台を目指しました。しかし、110円台は維持できず、109円台後半で先週を終えました。
この1カ月半、ドル/円は109円台、110円台での終値が続いています。この動きをみると、ドル/円を取り巻く環境はなんら変わっていないようです。今週27日のジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演がこの環境を動かす材料になるのかどうか注目です。
感染急増が金融政策に影響⁉
先週のこのコラムで、NZ(ニュージーランド)国内で感染者が一人確認されたため、NZ政府がロックダウンを行うと発表したことからNZ通貨が急落した話をしました。
NZ政府は感染者一人で厳しい対応をしましたが、この感染拡大への懸念は中央銀行の金融政策の決定にも影響を与えました。
ロックダウン実施発表の翌18日に開催されたNZ中銀の理事会では、マーケットの予想に反し、NZ中銀は金利据え置きの決定をしました。
NZ中銀は7月に国債の追加購入プログラムを終了していたため、マーケットは8月の利上げを織り込み、NZ通貨は買われてきましたが、今回の金利据え置き発表後、NZドルは急落しました。
NZ中銀は声明文で、「金融刺激のさらなる縮小で合意したが、ロックダウンで不確実性が高まっているため政策金利を据え置いた」と、苦渋の判断をしたことを伝えています。
トルコも、コロナ禍による景気先行きの不透明感から、インフレ懸念はあるものの8月の利上げを見送っています。
このようにデルタ株まん延による感染者急増は、各国の金融政策に影響を与え始めています。
先週は7月のFOMCの議事要旨からテーパリング前倒し観測が強まりましたが、米国でも、7月のFOMC後にデルタ株の感染者が急増していることから、FRB(米連邦準備制度理事会)にも影響を与えているのかどうか、27日の注目度が高まっています。
27日のジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演内容が、テーパリングの道筋を示すような、ややタカ派寄りの内容であれば、ドル高というのが基本的な反応と思われますが、先ほどの7月のFOMC議事要旨によってテーパリング前倒し観測が強まったことから、ドル高への反応は鈍いかもしれません。
一方で、テーパリングについて具体的な内容に触れない場合は、感染急増が景気回復への不透明感を強めているため、金融政策の判断を先送りするのではないかとの見方から、ドル売りの反応が大きくなるかもしれないため、注意が必要です。
FRB内でタカ派の代表格であるダラス連銀のカプラン総裁は、先週はやや腰の引けている発言をしています。カプラン総裁は、デルタ株の感染拡大によって経済回復に悪影響を及ぼすようであれば、テーパリングに関する見解を調整する可能性があることを示唆しました。