【2】「時間」の分散

 時間の分散には2つの意味があります。

 1つが「毎月1万円」など、購入タイミングを分けて購入すること。資産形成期の方が行う、いわゆる積立投資です。

 2つめが資産運用にかける時間を長くすることです。

 それを実証するデータが「世界株式型ファンド」のパフォーマンスです。1973年から2020年までの運用成績を見ていきましょう。

 1年間保有したとすると、32%の確率でマイナスになりますが、これを5年間持ち続けると、マイナスになった割合は21%になり、10年間保有し続けた場合は、マイナスになる確率は11%まで落ちます。そして、15年間保有し続けた場合は100%の確率でプラスの結果となりました。

 15年間の中には、第一次・第二次オイルショックをはじめ、イラン・イラク戦争、日本のバブル崩壊、アジア通貨危機、米国同時多発テロ、リーマンショック、コロナショックなど、株式市場に影響を与えた出来事がたくさんあったにもかかわらずです。

 どの年から始めていても、1年間だけの保有ならプラスになる確率は7割を切りますが、保有する期間が長くなるにつれて確率は上がり、15年保有するとマイナスにはならないということです。このデータは資産運用をする側からみれば、とても明るいエビデンスではないでしょうか。

 なぜこのような結果になるかというと、株式の伸びは背景に経済成長があるからです。世界経済の拡大(GDP:国内総生産の増加)に伴って、世界の株式も上がり続けてきました。

全世界株式(円ベース)とGDP(国内総生産)

 日本では人口が減っていますが、世界的に見れば人口は増加しています。人口が増加すると、食料や家具家電を購入する人が増えるのに伴い、世界経済の拡大が予想されます。

 そして日々、技術革新も進んでいます。最近ではアメリカサンフランシスコで3Dプリンターを使って家が建てられました。わずか24時間でコストは60万円です。驚くべきことですが、事実です。

 世界的に建築基準の厳しいといわれているオランダでも、3Dプリンター住宅の賃貸が始まります。コストも既存の建築技法より抑えられるため、利益率も高く株主にとってはプラスです。

 よって、今後も過去と同じように世界の株式を脅かす出来事があっても、長くても15年間保有すれば相場は復活し、世界株式はプラスの成績を期待することができるでしょう。

 ただし問題は、15年間も持ち続けなければいけないということです。

 セカンドライフに資金を使いたいのに、15年という期間は長すぎます。57歳の方の場合15年後は72歳です。正直なところ、15年もたたずに運用の果実を得たいと思う方も多いはずです。

 そこで実践すべきなのが「値動き」の分散です。