中国の教育産業は「終わり」を迎えるのか?
Yさんは政府官僚でも大手企業の経営者でもない一般人ですが、やはり中国の人というのは物事を戦略的に考えるのだなと改めて感じました。冒頭の映画館の比喩(ひゆ)は分かりにくいですが、要は「条件はみんな一緒」ということでしょう。Yさんいわく、「一部の富裕層は一対一の家庭教師で子供の成績向上を保とうとするだろうが」とのことでしたが、多くの家庭では、今後、義務教育段階にある子供を学習塾に行かせなくなるのでしょう。
そして、高校進学率は引き続き50%ですから、一般家庭の中には、勉強が苦手で嫌いな子供に対して、そこに入るための学習を無理強いするのではなく、そもそも職業学校狙いで伸び伸びと育てるという選択肢が有力視されるのかもしれません。経済的にも大分楽になるわけですから。
ただ、その場合、中国が国家として、市場として、社会として、今後ハイテク産業を育てるために、高い技能を持った産業労働者が大量に必要になる、その人たちは中国の経済成長にとって極めて貴重であり、しかるべき待遇を与えるというメッセージを具体的に出していけるか、実質的に動かしていけるかに掛かってくるでしょう。
Yさんも自らの息子さんの例を出しながら指摘していたように、科挙を生んだ国、中国では、依然として学歴至上主義が流行しています。職業学校進学者は頭の悪い「負け組」だという見方が一般的です。この凝り固まった風潮を覆すのは容易ではないでしょう。
ただ、一つ言えるのは、高等教育、職業教育を含め、教育は教育だということ。義務教育段階においては、規制と言える政策が出てきましたが、今後、幼児教育、成人教育、そして日本語で言うところの「職人」をあらゆる分野で育てるような教育ビジネスが中国の地で誕生するかどうか。
私自身は、中国における「教育熱」が冷めるとは全く思っていませんし、マーケットにおいても一つの有力な産業、業種として、引き続き注目していく価値があると思っています。