差し引ける税金がないと外国税額控除の適用が受けられない
もう一つ気をつけておきたいのが、外国税額控除の適用についてです。
仮に配当金以外に他の所得がないとすると、日本株の配当金の場合は、総合課税で確定申告することにより、源泉徴収された税金がすべて戻ってきます。
しかし、米国株の配当金の場合は、日本国内で源泉徴収された税金はすべて戻ってきますが、米国で源泉徴収された税金については、外国税額控除として差し引ける日本国内の税金がそもそもないため、取られっぱなしで終わってしまうのです。
したがって、所得が少ない方の場合は、米国株の場合配当金の10%はどうしても課税されてしまうという点を理解しておいてください。
なお、外国税額控除は、控除できなかった額を3年間繰り越すことができるため、翌年以降所得税額が発生した場合、そこから外国税額控除の適用を受けることができます。
源泉徴収のみで終了とさせるケースは少ない
米国株の場合は、配当金の税金の3つの課税方法のうち、源泉徴収のみで終了(申告不要)とさせるケースは少ないと思います。
配当金以外の所得が多い方は、日本株の配当であれば確定申告するよりも源泉徴収のみで終了とさせる方が有利になります。
しかし米国株の配当は、源泉徴収のみで終了とさせると、外国税額控除の適用を受けられないため、配当金以外の所得が多ければ申告分離課税で確定申告する方が有利となるのです。そして配当金以外の所得が少ない方は総合課税で確定申告する方が有利となります。
したがって、源泉徴収のみで完了とするのは、例えば配当金を確定申告することにより配偶者控除が使えなくなってしまうなど、確定申告をしない方がトータルで見て有利な場合となります。
日本株と米国株の両方の配当金がある場合は?
日本株の配当金と米国株の配当金の両方がある場合、さらに話がややこしくなってきます。両方の配当金をあわせて、3つのうちどの方法が有利かを判定する必要があるからです。
例えば日本株の配当金のみであれば総合課税で確定申告するのが有利、米国株の配当金のみであれば申告分離課税で確定申告するのが有利というケースもあります。
しかし、確定申告する配当金は、総合課税か申告分離課税のいずれか1つのみに統一しなければならないことになっています。
そのため、上記のケースであれば、米国株の配当金は申告分離課税で確定申告し、日本株の配当金は源泉徴収のみで完了させる、もしくは日本株、米国株とも総合課税で確定申告する…といったように、有利な方法をシミュレーションの上決めていく必要があるのです。
まとめると、次のようになります。
- 配当金以外の所得が少ない場合:総合課税で確定申告するのが有利
- 配当金以外の所得が多い場合:申告分離課税で確定申告するのが有利
- 確定申告することにより配偶者控除などが使えなくなるためかえって負担が大きくなる場合:源泉徴収のみで課税を完了させる(確定申告しない)のが有利
その上で、一人ひとりが、おかれた状況を踏まえ、どの方法がご自身にとって有利になるかどうかを事前にシミュレーションした上、必要に応じて税務署や税理士などにご相談の上、判断するようにしてください。
今回ご説明した内容はあくまで一般的なケースを想定しており、場合によってはこれとは異なる結果になる可能性もありますので、慎重な判断をお願いします。
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