米雇用改善が鈍い背景

 バイデン政権は7月4日までに、18歳以上の国民の、少なくとも1回の接種率70%を目標にしていましたが、CDC(米疾病対策センター)によると、7月4日の接種率は67%とのことです。

 州によってばらつきがあり、ニューヨーク州(72.6%)、カリフォルニア州(75.1%)は70%以上ですが、ミシシッピ州(46.3%)、ルイジアナ州(49.2%)などは50%を割れ、40%台となっているところもあります。

 アンケートによると、接種を受けていない人の74%が接種をしないだろうという結果が出ていることから、民主党基盤の州と、共和党基盤の州との接種格差は縮まらないかもしれません。

 6月の米雇用統計のNFPは、昨年8月来の雇用増でしたが、コロナ前の雇用水準までには、まだ680万人の雇用回復が必要です。米国のGDP(国内総生産)や景況感の劇的な回復と比べると、雇用の改善は緩やかな状況となっています。

 接種率も目標の70%には届かなかったものの、70%に近づいているため、もう少し雇用回復のスピードが速まってもよいのではないかと思われますが、現在の雇用改善の伸びが鈍い背景として挙げられているのは次の3点です。

(1)経済対策による失業給付の追加給付は、まだ全米で半分の州が9月上旬まで給付継続。全人口の4割を占めるそれらの州では、手厚い給付のため働きに出ない人が多い。
(2)子供の世話をするため、9月の学校再開まで復職が困難
(3)コロナ感染の恐怖から接触型サービス業務を避ける傾向

(1)の追加給付と(2)の学校再開は、パウエル議長が指摘するように9月には状況が改善される可能性が高いかもしれません。しかし、(3)のサービス業務の敬遠は健康上の問題であるため、心理的な足かせとして長引く可能性があるかもしれません。

 こういう状況の中で気になるのは、米国の独立記念日の3連休で外出が増え、家族や知人・友人との交流が相当増えることが予想されることです。

 変異型ウイルスの感染比率が上昇してきており、連休明けには感染者が増えることも予想されます。そうなると、感染拡大の規模によっては、規制が再び発動され、(2)の学校再開が遅れたり、あるいは、(3)のサービス業務への復職にも大きな影響を与えることも想定されます。

 今回の雇用統計の結果を受けて、早期の金融引き締め観測が大きく後退したわけではないとの見方が多いようです。テーパリング開始の表明時期が、8月のジャクソンホール会合から9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)に後倒しになった程度のようです。

 もしそうなら、ドル/円も大きく下落しないかもしれません。しかし、3連休明けの感染拡大状況によっては、下押しが深くなる可能性も予想されるため、3連休後の感染状況には注視する必要がありそうです。

 3連休後の2週間後あたりからの米国の感染状況によっては、雇用改善に影響が及び、FRBの金融引き締めのスケジュールにも影響してくるかもしれないからです。