国内大手が有利、新疆綿問題を機に製品開発力やブランド力が進化
BOCIは中国のスポーツウエアセクターの高成長が今後も続くと予想。中でも国内大手が市場シェアの拡大に向け、有利な立ち位置にあるとみている。新疆綿のボイコット問題に絡む国内ブランドへの支援ムードが長続きしない可能性を指摘しながらも、製品開発やブランド構築において、国内大手がこの先、ナイキやアディダスを追い上げるとの楽観見通しを維持。セクター全体への強気見通しを継続し、個別では申洲国際集団(02313)、安踏体育用品(02020)、李寧(02331)、滔搏国際(06110)の株価の先行きに強気見通しを示した。特歩国際(01368)に対しては中立見通しを付与している。
新疆綿問題を背景とする愛国気運は「国産ブランド買い」に向かい、最も恩恵を受けたのは李寧。以下、安踏体育用品、特歩国際の順だった。この種の愛国的な消費行動は一時的とみられるが、BOCIはこれが国内勢の商品開発やブランド構築の強化という構造変化を後押ししたとみる。例えば、李寧が「李寧雷雷雷雷」(雷×4は“田”型に配置)名で投入した技術は、「BOOM」シリーズの機能強化に寄与。また、特歩国際のカーボンプレートを採用した厚底シューズ「160X 2.0」はマラソンランナーから好評だった。このほか、スポーツカジュアルウエアはデザイン性の向上や“中国色”の取り込み、アンバサダーとしてのセレブの起用などを背景に、急成長を遂げている。
国内ブランドにとって、EC(ネット通販)は消費者への理解を深めるための戦略的な焦点。各社とも、オンライン限定シリーズの投入やO2Oモデルの導入などを通じ、オンラインビジネスの最適化を目指している。中でも李寧はオンライン上でのプレゼンスが高く、ECの売上構成比が2020年に28.3%。一方の安踏体育用品も20%を超え、採算性も改善した。安踏は2025年までに、この割合を40%に引き上げる方針という。
また、各社は多様化する消費者のニーズに応えるための戦略を実施している。安踏と特歩国際がマルチブランド戦略を進める半面、李寧が採用しているのは「シングルブランド、マルチカテゴリー」戦略。すでに強みを持つバスケットボールやスポーツカジュアルウエア以外に、新たなカテゴリーの開拓を目指す。
スポーツウエア・チェーン銘柄の現在株価の2022年予想PER(株価収益率)は平均25倍。BOCIはナイキなどを扱う販売最大手の滔搏国際と特歩国際について25倍、ナイキなどのOEMを手掛ける申洲国際集団については36倍をあてはめ、目標株価を算出。有力ブランド2社、安踏と李寧に関しては、それぞれ40倍、51倍をベースに目標株価を設定した。
今後のレーティング見直しにつながる可能性がある潜在リスク要因としては、中国経済の減速、市場競争の激化、新型コロナの再燃、政治面の緊張などの可能性を指摘。逆に支援材料としては、6月18日のネットセールイベント「618」、2021年7月の東京五輪、2022年2月の北京冬季五輪を挙げている。