短中期の収益性に慎重見通し、ネット処方薬への医療保険適用は当面期待薄

 BOCIはオンライン医療セクターに対して中立見通しを付与するとともに、新規のカバレッジを開始した。同セクターは政策方針に大きく左右されるのが特徴であり、チャンスとリスクが同時に存在する。新型コロナのまん延は、ネット医療サービスの需要増や市場の拡大を後押しするが、半面、◇処方薬販売のオンラインへのシフトがどの程度進むか、◇処方薬のオンライン販売に対して医療保険が適用されるかなどの点で、不確実性が強い。BOCIは潜在的なリワードとリスクを考慮した上で、医薬品ネット通販最大手である京東健康(06618)の株価の先行きに対して強気見通しを付与したが、阿里健康(00241)と平安健康医療科技(01833)に対しては慎重。それぞれ長期成長見通しの不透明感、利益見通しの明確さの欠如を、慎重見通しの理由としている。 

 マーケットはこの先、処方薬の購入が医療機関からオンラインにシフトすると期待するが、BOCIはこの点について懐疑的。ネット販売に医療保険が適用されていないことに加え、院内処方の権利を手放す医師へのインセンティブが不十分である点が理由だ。院内処方からのシフトでは、オンラインより、オフラインの院外処方の方が現実的という。 

 処方薬のオンライン販売に関して、この先焦点となるのは医療保険が適用されるかどうか。BOCIは医療保険の適用がオンライン購入への移行の前提条件になると指摘しながらも、短中期的な実現可能性は低いとみる。業界専門家らにリサーチしたところ、国家医療保障局(NHSA)は、医療保険の適用に関して消極的であるもよう。ネット上の処方薬の信頼性を担保するための明確な規定が存在しないことがその一因。ここ数年、医療保険基金の赤字圧力が高まっているという事情もあるという。 

 オンライン医療はもともと普及率が低く、向こう1-2年程度は急成長ペースを維持する見込み。ただ、処方薬に医療保険が適用されない場合、オフラインからオンラインへのシフトには、予想以上の時間がかかる可能性がある。政策的な不確実性を理由に、BOCIは2030年の国内オンライン医薬品売り上げを3,210億元規模と予想。この時点でも、オンライン購入の浸透率は10%にとどまるとみる。これは、「2030年に18%」という米フロスト&サリバン社の予測と比べ、かなり慎重な数字となっている。 

 一方、問診などのオンライン医療サービスは長期的な普及が見込まれる半面、短中期的な採算性には疑問が残るという。診察は治療の重要な要素だが、基本的な問診などに対する患者側の課金意欲は低く、収益化には長期を要する見込み。オンライン医療銘柄にとっては今後3年間、医薬品のネット通販が最も明確な収益モデルとなる可能性が高い。 

 BOCIはDCF(ディスカウントキャッシュフロー)方式でオンライン医療銘柄を評価。現段階ではネット小売薬局ビジネスの最大手である京東健康だけが投資選択肢になり得るとし、他2銘柄に関しては当面、様子見に回るよう勧めている。