ファンダメンタルの変化が確認できてから売るのでは遅い

 ここまでご説明した売り時は、いずれも株価チャートや各種指標などいわゆる「テクニカル分析」の側面をもったものです。

 一方、ファンダメンタル分析の観点から売り時を把握する方法ももちろんあります。最も一般的なものは、業績の下方修正発表などにより、当初期待していた業績が達成できないことが明らかになったときです。しかしこれは、筆者としては最も避けるべきと考えている方法です。

 多くの場合、ファンダメンタルの変化は株価の後追いとなります。つまり、業績の悪化などファンダメンタルの変化が一般の投資家にも明らかになったころには、株価はすでにかなり下落してしまっていることが多いのです。他の多くの銘柄の株価は順調に上昇しているのに自分の持ち株はなぜか値下がりしている、というような場合、多くはその後業績見通しの下方修正発表などの悪材料が出現する傾向にあります。

 株価には先行性があります。株価の動きを重視せずにファンダメンタルの変化(悪化)を実際に確認できてから売るという行動は、せっかくの利益を失うばかりか、多額の損失の発生にもなりかねません。株価が下げ続けて移動平均線が下向きになったり、株価が移動平均線を明確に割り込むなど下降トレンド入りが濃厚になっても、業績下方修正などの悪材料の公表はいまだにされていない、ということもよくあるのです。株価チャートが下降トレンドに転換したなら、ファンダメンタルの明確な変化がみられなくとも利益確定売りをするべき、というのが筆者の考え方です。

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足立武志(ダイヤモンド社)