※本記事は2020年8月22日に公開したものです。
前回の「売り時を考える(1)」では、上昇途中で売るケースと上昇トレンド終了を見極めてから売るケースの2つにつき検討しました。今回はそれ以外の売り時につき、活用法や注意点をご説明していきます。
ボックス相場では株価の節目到達で売る
株価の動きに明確な上昇トレンドが生じておらず一定の範囲内で株価が上下するボックス相場を形成している銘柄は、ボックス上限に株価が近づいたら、とりあえず一旦利益を確保しておくという方法が考えられます。ボックス相場が続く限りはボックス上限で株価は跳ね返され、反転下落に転じることになるからです。
その上で、もしボックス上限を超えて株価が上昇したら、新たに上昇トレンドが発生したとみて再び買いなおせばよいのです。
また、過去に何度も跳ね返された価格帯など株価の節目に実際の株価が近づいたときも、同様にひとまず売っておき、節目を超えて株価が上昇したらその時点で改めて買い直せばよいでしょう。
株価チャートに天井サインが現れたら売る
大きく上昇をしてきた銘柄の株価チャートに長い上ヒゲやかぶせ線など天井を示唆するローソク足の形が現れたら、利益確定売りを検討すべきです。
短期売買であれば、日足チャートにこれらの形が現れたら利益確定売りを強く検討する必要があります。中長期投資なら、日足チャートにこうした形が現れただけではあまり気にしなくても大丈夫ですが、週足チャートや月足チャートに現れたなら注意が必要です。一部だけでも利益確定しておくのが一策です。
また、その際にはあわせて売買高の推移にも目を配っておきましょう。長い上ヒゲやかぶせ線をつけた時期に売買高が突出し、その後急速に売買高が細っているような場合は要注意です。そのときつけた高値がしばらくの間突破されない高値になる可能性が高いからです。
買値を基準とした目標値到達で売る方法はお勧めしない
株価の動きと自身の保有株の買値の間には何ら関連性はありません。したがって、買値を基準とした利幅や利益率、たとえば買値から50円株価が上昇したら売るとか、買値から株価が20%上昇したら売る、というのは短期売買で利益確保を優先する場合であればともかく、筆者としてはあまり賛成しません。
特に中長期投資の場合は、あくまでも上昇トレンドが続く限り、もしくは明らかな過熱状態にならない限りは、買値から50円、100円上がろうが、買値から2倍、3倍になろうが持ち続けて利益を伸ばすべきです。
しかし一方で、株価はいつまでどこまで上昇するか分からないのも事実です。持ち株を少しずつ売却するのであれば、買値を基準とした上昇幅や上昇率を基準としても良いでしょう。
買値を基準とした売り時として有名なものに、投資元本の回収重視という観点から、持ち株の株価が買値から2倍になったら半分売る、という方法があります。こうすれば、税金や手数料の影響を除けば、残り半分の持ち株はタダで保有できることになり、計算上いつ売っても利益を得ることができるという点がメリットです。
ファンダメンタルの変化が確認できてから売るのでは遅い
ここまでご説明した売り時は、いずれも株価チャートや各種指標などいわゆる「テクニカル分析」の側面をもったものです。
一方、ファンダメンタル分析の観点から売り時を把握する方法ももちろんあります。最も一般的なものは、業績の下方修正発表などにより、当初期待していた業績が達成できないことが明らかになったときです。しかしこれは、筆者としては最も避けるべきと考えている方法です。
多くの場合、ファンダメンタルの変化は株価の後追いとなります。つまり、業績の悪化などファンダメンタルの変化が一般の投資家にも明らかになったころには、株価はすでにかなり下落してしまっていることが多いのです。他の多くの銘柄の株価は順調に上昇しているのに自分の持ち株はなぜか値下がりしている、というような場合、多くはその後業績見通しの下方修正発表などの悪材料が出現する傾向にあります。
株価には先行性があります。株価の動きを重視せずにファンダメンタルの変化(悪化)を実際に確認できてから売るという行動は、せっかくの利益を失うばかりか、多額の損失の発生にもなりかねません。株価が下げ続けて移動平均線が下向きになったり、株価が移動平均線を明確に割り込むなど下降トレンド入りが濃厚になっても、業績下方修正などの悪材料の公表はいまだにされていない、ということもよくあるのです。株価チャートが下降トレンドに転換したなら、ファンダメンタルの明確な変化がみられなくとも利益確定売りをするべき、というのが筆者の考え方です。
「株を買うなら最低限知っておきたい株価チャートの教科書」
足立武志(ダイヤモンド社)
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