1.上値の重い半導体業界。今後のポイントは生産能力拡大の進捗。

 今年に入って上値が重たい半導体の株価ですが、5月中旬以降はやや回復傾向で、当社の顧客のなかでも足元で物色する方が多いセクターになっています。

 SOX指数(半導体関連の30銘柄で構成されている指数。フィラデルフィア証券取引所が算出。)は、4月初旬をピークに売り進まれていましたが、6月8日時点では年初来比13%プラスの水準まで回復。

 個別企業では、半導体不足を背景にした業績拡大期待から半導体製造装置の大手企業群が買われており、アプライド・マテリアルズ(AMAT)は年初来で57%のプラス、ASMLは40%のプラス、ラムリサーチが35%のプラスで推移しています。

 ただし、4月ごろにつけた年初来の高値は抜けられない状況です。今年に入って全体的に上値が重くなっているのは、昨年のパフォーマンスが良好だった反動と考えられます。

 半導体企業はコロナ禍のなかでも業績が堅調で、SOX指数は昨年の5月ごろには、既にコロナ禍前の水準まで回復していました。グロース株にも通じるところがありますが、昨年株価パフォーマンスが良かったセクターは今年上がりにくい状況です。

<SOX指数と半導体主要10社の相対株価推移>

出所:ブルームバーグ(2020年12月31日~2021年6月8日まで)(2020年12月31日=100)

 それに加えて半導体は今期イレギュラーな状況にあり、需要に対応する安定した供給を提供できない状態です。需要に対して生産能力が追い付いていない企業は、期待先行の市場から厳しく評価されがちです。

 例えば、アナログICを展開するテキサス・インスツルメンツ(TXN)は、直近の四半期決算で予想を上回る結果を出しましたが、会社側が示した4-6月期売上高の見通しが十分ではないと評価されたもようで、株価は下落基調となりました。

 こうした環境を考慮すると、半導体セクターが上昇トレンド入りするためには、生産能力拡大やリードタイム、在庫水準の改善の面で、新たなポジティブサプライズが必要になると考えられます。

 一方、個別企業では、エヌビディア(NVDA)が既に年初来の高値を超え上昇基調となっています。後述しますが、エヌビディアは来期、再来期も2桁営業増益が期待できる企業で、足元は好材料も目立ち、今後も株価上昇に期待が持てる銘柄と言えます。