10万円分の株を買っただけでも、人生が見える

◆日本人の中には「投資=金儲け」というイメージが根強いようです。

「投資=資産を増やす行為」だけにフォーカスしてしまうと、単にお金を儲けるための行為、浅ましいという印象で投資が捉えられてしまうかもしれません。非常にもったいないことですね。

「投資」の本質は、「自分とはどういう人間なのか」、真に向き合うことができることにあると思います。

 たとえばドカンと損したときに、落ち込んで3日くらい飯が食えない人間なのか、それとも「しょうがない」と気持ちを切り替えて、飯もモリモリ食べて、次の日も変わらず会社へ行ける人間なのか、はっきりとわかってしまうんです。

 自分を客観的に見る機会はそうありませんよね。哲学的なアプローチをする人もいますが、「オレってどういう人間なのか」という問いには、投資が一番わかりやすい答えを出してくれると思います。

 主人公の財前君なんて、初めての取引で損を出しながらも、いさぎよく「売っちゃった」と損切りをした。

©三田紀房

 ある投資家から聞いたのですが、投資家として成功できる人は、躊躇せず損切りをできる人だということでした。値下がりした株は損を出してもいいから売る。そして新たな株に移る行動ができる。

 これは人生にもつながることで、たった10万円分の株を買っただけでも見えてくる。その人の人生の処し方そのものが現れてしまうんです。 

 彼女に振られてご飯もノドを通らないという人間より、「しょうがない。縁がなかった」と考えて、次の日には別の女の子に声をかけるような人間のほうが、成功していく気がします。自分という人間を客観視する、自分の置かれた状況を冷静に判断できる。そういう視点を養うトレーニングになるのが投資。

 もっと言うと、投資は自己改革の機会を与えてくれる最高の手段。メンタルトレーニングのツールにもなるんです。

『インベスターZ』インタビュー後編へ続く

『インベスターZ』(講談社刊)©三田紀房 

今回の取材先:
三田紀房(みた・のりふさ)さん

 1958年生まれ、岩手県北上市出身。明治大学政治経済学部卒業。

 代表作に投資をテーマにした『インベスターZ』のほか、『ドラゴン桜』『エンゼルバンク』『クロカン』『砂の栄冠』などがある。『ドラゴン桜』で2005年(第29回)講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。現在、「ヤングマガジン」にて『アルキメデスの大戦』を連載中。

インベスターZ』(1~21巻)は好評発売中です。

■『インベスターZ』はテレビ東京で、7月13日(金)深夜0時57分からドラマ25「インベスターZ」として放映開始予定です。早見あかりなど、人気俳優が出演するほか、ホリエモンこと堀江貴文氏がナレーションを担当します。また、メルカリの小泉文明氏、ユーグレナの出雲充氏、メタップスの佐藤航陽氏など、実在するベンチャー企業の社長が顔を出すことも話題になっています。