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米シェール生産、過去最高へ。データが語る原油市場の舞台裏
吉田 哲
週刊コモディティマーケット
コモディティ(商品)をお取引いただく上でのコメント・アイディアを提供するレポートです。金をはじめとした貴金属、原油をはじめとしたエネルギー関連銘柄、とうもろこし・大豆などの穀物な…

米シェール生産、過去最高へ。データが語る原油市場の舞台裏

2017/10/20
・米国のシェールオイルの生産量は年内に過去最高へ。9カ月連続で増加中
・米シェール主要地区の原油生産量は、OPEC2位のイラクや同3位のイランを超える
・米国の原油生産におけるシェールの比率は60%超。10年で約2倍に
・原油価格の上昇で、米シェール生産地区の開発活動が活発化
・米国の原油生産量は2018年に過去最高へ
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 米国の原油生産量(シェールオイルを含む)はこの10年で2倍弱まで増えています。その背景には、米国のシェールオイル主要地区の原油生産量が急増したことがあります。

 以下のとおり、いまや米国はサウジアラビアとロシアをしのぐ世界屈指の原油生産国です。

図:原油生産量(1日あたり) 単位:百万バレル/日量

出所:BP(British Petroleum)のデータより筆者作成

 2014年以降、3年連続で米国の原油生産量がサウジアラビアを上回りました。2016年時点で世界の原油生産シェアは米国が13.41%、サウジアラビアが13.40%、ロシアが12.18%です。

 米国の原油生産量を大きく増加させた米国のシェールオイルについて、今週月曜日に公表された最新のデータをもとに、その現状をまとめます。

 

9カ月連続で増加。米国のシェールオイル生産量は年内に過去最高へ

 米国のエネルギー省(U.S. Energy Information Administration、以下EIA)は毎月、米国のシェールオイル主要地区の原油生産量や稼働している掘削機(リグ)などのデータを公表しています。

 以下はEIAが挙げる7つのシェールオイル主要生産地区です。

図:米国のシェールオイル主要生産地区

出所:EIAのデータより筆者作成

図:シェールオイル主要地区の原油生産量(7地区合計)の推移 単位:百万バレル/日量

出所:EIAのデータをもとに筆者作成

 シェールオイルブームは2010年ごろ始まりました。ブームが始まる前は、米シェールオイル主要地区の原油生産量は日量130万バレル程度でした。

 しかし、2010年以降、原油価格の高止まりを背景に、シェールオイル主要地区の生産量が急増しました。しかし、2014年後半から2016年初頭まで原油価格が急落したため、生産量は低下。その後、原油価格が反発したことをきっかけに、再び生産量は増加に転じています。

 2017年9月の米シェールオイル主要地区の原油生産量は日量594万バレル。EIAは10月には日量603万バレルを超えると見通しており、10カ月連続の増加、そして同地区の生産量として初めて600万バレルの大台に乗ると見込んでいます。

 

米シェール主要地区の原油生産量は、OPEC2位のイラクや同3位のイラン超え

米シェール主要7地区で最も生産量が多い地区はOPEC5位のクウェートに匹敵

 米シェールオイル主要地区の原油生産量を、主要な産油国と比較したのが以下のグラフです。

図:米シェールオイル主要地区と主要産油国の原油生産量の推移 単位:百万バレル/日量

出所:ブルームバーグ、米エネルギー省のデータをもとに筆者作成

 2012年に米国のシェールオイル主要地区は、OPEC(石油輸出国機構)2位のイラクの生産量を上回りました。また、米シェール主要地区で最も生産量が多い「パーミアン(Permian)地区」の原油生産量は、2017年9月時点でOPEC5位のクウェートに迫ってきています。

「パーミアン(Permian)地区」は、先に記載した図「米国のシェールオイル主要生産地区」で確認できます。テキサス州西部からニューメキシコ州にまたがる地区です。

図:パーミアン地区の原油生産量の推移 単位:百万バレル/日量

出所:EIAのデータより筆者作成

 パーミアン地区の原油生産量は原油価格急落の影響で減少した2015年初頭から2016年後半まで伸びが一時鈍化しました。ただし、原油価格が反発した後は再び伸びの勢いが増しています。

 米シェールオイル主要地区の原油生産量の増加の背景にあるのは、同地区の新規1油井あたりの原油生産量の推移に見られる「技術革新」です。

図:新規1油井あたりの生産開始から数カ月間の原油生産量(7地区平均) 単位:バレル/日量

出所:EIAのデータをもとに筆者作成

 1つの新規油井から生産される原油の量が増えています。ブーム前は日量100バレル以下でしたが、現在は日量600バレルを超えるまでに増加しています。2016年後半からはやや低下していますが、今後は再び増加に転じる見通しが示されています。

 1つの坑井において地中で管を枝分かれさせる工夫や、埋蔵量が多い鉱床を効率よく見つけるための技術の進歩などによって、格段に生産効率が向上しています。

 

米国の原油生産におけるシェールの比率は60%超。10年で約2倍に

 米国の原油生産量に占めるシェール主要地区のシェアは2017年9月時点で60%を超えています。一方、メキシコ湾、アラスカなどのシェアは低下しました。

 以下は米国の原油生産の内訳です。

図:米国の原油生産の内訳

注:カッコ内は2007年9月比
出所:EIAのデータより筆者作成

 この10年でシェールオイルの存在感が米国内で大きくなりました。このことにより、米シェールオイルの生産量の増減が、米国全体の原油生産量の増減に結びつきやすくなったと言えます。また、米国はシェールオイルの比率が上昇することで、以下のメリットが得られると考えられます。

  • ハリケーンの襲来で被害が発生しやすいメキシコ湾の原油生産の比率を下げられる

  • 国内の原油供給における輸入の比率を下げられる(中東など地政学リスクを抱える国への依存度低下)

  • 輸入比率の低下で、米国内の石油産業が活性化する

 

原油価格の上昇で、米シェール生産地区の開発活動が活発化

原油価格が反発した昨年後半以降、開発段階における“掘削”と“仕上げ”が完了した数が増加傾向に

 以下は、米シェールオイル主要地区の探索から生産開始までの過程(探索→開発→生産)を示したものです。掘削とは掘削機(リグ)を使って坑井を掘ることで、仕上げとは掘った坑井に対して原油を生産するために必要な処理をすることです。

図:米シェールオイル生産に係る探索から生産開始までの過程のイメージ

出所:ヒアリング等により筆者作成

 以下は図内の「掘削完了」・「仕上げ完了」となった坑井の数と、WTI原油先物価格の推移です。

図:「掘削完了」と「仕上げ完了」を経た坑井の数とWTI原油先物価格の推移

出所:EIAのデータおよびCMEのデータをもとに筆者作成

 掘削と仕上げが完了した坑井の数は、2016年の半ば頃から増加傾向に転じました。そのきっかけとなったのは、原油価格の反発です。将来、シェール企業が自ら生産した原油を売る際に有利になる(採算に合う)との見方から、原油価格の反発を機にシェール業者が生産を行うことを前提とした開発を活発化させました。

 2017年10月現在、WTI原油先物価格は1バレル52ドル近辺で推移しています。先月、原油価格がこの水準以下だった状況においても、掘削と仕上げが完了した坑井の数は増加傾向を維持しました。

 

「米国の原油生産量は2018年に過去最高に達する」と米エネルギー省

同省の「米国の原油生産の拡大見通し」はシェールの生産増加が根拠

図:米国の原油生産量と米シェールオイル主要地区の原油生産量の推移 単位:百万バレル.日量

出所:EIAのデータをもとに筆者作成

 先述のとおり、米シェールオイル主要地区の原油生産量は今年に入って増加傾向です。その地区の原油生産量が60%を占める米国全体の原油生産量もまた、増加傾向。これが世界全体の原油生産量を増加させる要因になると考えられます。

 EIAは、シェールに関する月次レポートを公表した日と同日、「米国の原油生産量が2018年に過去最高を更新する」という見通しを示しました。現在の米国の原油生産の内訳をみれば、シェールがその見通しの大きな根拠であることは容易に想像できます。

 今回は原油市場を取り巻くさまざまな材料の中から、米国のシェールオイルの状況について、今週公表されたデータをもとにご紹介しました。

 世界の石油需給を安定化させるべく供給量を絞る減産を実施しているOPECと一部の非OPEC等合計24カ国の動向とともに、今後も米国の動向を注視していきたいと思います。

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