「株主優待」で人気の銘柄から、予想配当利回りの高いものを選ぶ

 クイズを解いていただいて分かったと思いますが、NISAで人気優待株に投資するなら、なるべく配当利回りの高い優待株を選んだ方が、良いと思います。NISAは、投資によって得られる利益(配当金や売却益)にかかる税金が免除されるありがたい制度です。非課税メリットがなるべく多く取れる投資を考えた方が良いと思います。配当利回りが高い方が、節税メリットが大きくなると考えられます。

 そこで、私はNISAで投資すべき人気優待株は、予想配当利回りが3.5%以上の銘柄から選ぶこととしました。

 一部の「優待好き」投資家に、優待品の魅力ばかり見て、配当利回りを見ていない方がいるのには、首をかしげます。というのは、人気の優待銘柄には、配当利回りの低い銘柄が多いからです。配当利回りを見ず、ひたすら優待品だけ見て投資するのは、必ずしも、合理的な投資行動とはいえません。優待品がたくさん送ってくるのは嬉しいですが、それよりも、たくさん配当金をもらって、それで自由に好きなものを買った方がいいとも言えます。

 NISAでは、「株主優待と配当利回りが両方とも魅力的な銘柄」を選んで投資したら良いと思います。ところが、それは意外とありそうでありません。配当利回りの高い会社には、「株主への利益還元は、配当金でやるべき」という考えを持っていて、株主優待を行わない企業が多いからです。

 ただし、一生けんめい探すと、優待も配当利回りも魅力という銘柄も見つけられます。今日は、楽天証券の「株主優待検索」で、優待人気上位20社に入っている銘柄の中から、予想配当利回りが3.5%以上の銘柄を選びました。ただ、アナリストとしては、それだけで選ぶこともできません。中長期の収益力や財務内容が良好なものを選ばなければなりません。そこで、直近決算での営業利益率が10%以上のものに絞りました。以下の4銘柄は、その条件を満たしています。

優待人気上位20社のうち、予想配当利回り3.5%以上、営業利益率10%以上の4社

コード 銘柄名 配当利回り 営業利益率 優待内容
8591 オリックス 4.3% 11.8% 優待内容
2914 日本たばこ産業 6.0% 22.4% 優待内容
9433 KDDI 3.6% 19.6% 優待内容
9432 日本電信電話 3.7% 13.1% 優待内容
出所:配当利回りの根拠は、1株当たり配当金(会社予想)を2月9日株価で割って算出。1株当たり配当金は下の表を参照。営業利益率は、日本たばこ産業は2020年12月期実績、他は2020年3月期実績

 

配当利回りの根拠・最小投資金額

【単位:円】
コード 銘柄名 株価
2月9日
1株
当たり
配当金
最低
投資
金額
8591 オリックス 1,753.5 76.0 175,350
2914 日本たばこ産業 2,151.0 130.0 215,000
9433 KDDI 3,326.0 120.0 332,600
9432 日本電信電話 2,828.5 105.0 282,850
出所:1株当たり配当金は、日本たばこ産業は2021年12月期会社予想ベース。他は2021年3月期会社予想ベース。最低投資金額は、2月9日の終値で最低投資単位100株を買うのに必要な金額

 以下、4銘柄を簡単にコメントします。

◆オリックス

 オリックスの予想配当利回りは、2月9日時点で4.3%と魅力的な水準です。オリックス株を保有すると、配当金とは別に、年1回(3月末)、優待品を受け取る権利が確定します。ふるさと優待カタログBコースから、1点選んだものが贈呈されます。

 オリックスは、長期保有の株主は、優待内容が増加する制度にしています。3年以上、オリックス株を保有する株主には、1ランク上のふるさと優待カタログAコースから、1点選ぶことができます。

 カタログギフトとは別に、半期ごとに贈られる株主カードを使えば、オリックスグループが提供する各種サービスを割引価格で利用できる特典もあります。

 オリックスは金融株であり、金融株全般に、低金利が長期化する中で収益が圧迫される不安があり、株価は低迷が続いてきました。ただし、オリックスはリース事業を中核に多面的な業務展開で安定的に高収益をあげていく力を持っていると私は評価しています。コロナ禍の影響を受ける前の2019年3月期の純利益(前期比3%増の3,237億円)は、5期連続の最高益でした。今期(2021年3月期)の純利益(会社予想)は、コロナ禍の影響もあって1,900億円まで減少する見込みですが、コロナが収束すれば、再び最高益を更新していく力があると判断しています。

◆日本たばこ産業(JT)

 JTは、12月決算銘柄です。今期(2021年12月期)の予想配当利回り(会社予想ベース)は、2月9日時点で6.0%です。配当利回りの高さが魅力的です。

 JTは優待でも人気ですが、1つ注意があります。今から投資しても、最初に優待の権利が得られるのは、約2年先の2022年12月からとなります。JTは年1回、12月末時点で1年以上継続保有している株主に、株主優待品(自社製品・食品など)を贈る権利を賦与するからです。今から投資しても、2021年12月末ではまだ1年経過していませんので、優待の権利は得られません。今年は、6月末と12月末に、配当金を受け取る権利だけを得ることになります。

 JTは、国内喫煙者減少やコロナ禍の影響で今期(2021年12月期)純利益(会社予想)は前期比22.6%減の2,400億円と、6期連続減益を見込んでいます。今期配当(会社予想)は、1株当たり130円と前期(154円)から24円減です。

 業績が低調で株式市場で不人気ですが、私は、中長期的に好財務・高収益を維持していけると評価しています。国内喫煙者の減少に対し値上げで利益維持をはかれること、海外(新興国)で販売を増やしていく余地が大きいことが支えとなります。

◆KDDI

 KDDIは、3月決算企業です。予想配当利回り(会社予想ベース)は、2月9日時点で、3.6%と魅力的な水準です。

 KDDI株を保有すると、配当金とは別に、年1回(3月末)、優待品を受け取る権利が確定します。同社が注力する総合通販サイト「au Wowma!」より、「全国47都道府県のグルメ品」から自由に選べるカタログギフトが、贈呈されます。

 KDDIは、長期保有の株主ほど、優待内容が増加する制度にしています。100株を保有する場合、保有期間5年未満の株主には3,000円相当、5年以上保有すると5,000円相当のカタログギフトが贈呈されます。

 KDDI株は、携帯電話事業の競争激化懸念で株価の上値が重くなっていますが、業績は好調です。世界景気に影響されずに安定成長を続け、今期(2021年3月期)、19期連続の増配を予定しています。ケータイ電話収入は、減少し始めていますが、通信と融合したライフデザイン事業の利益拡大によって、成長を続けています。これからも安定高収益を維持していくと予想しています。

◆日本電信電話(NTT)

 NTTは、予想配当利回りが2月9日時点で3.7%と魅力的な水準です。それに加え、今期(2021年3月期)から、株主優待制度も新設しました。期末(3月末)に100株以上、2年以上保有し、所定のエントリー手続きをした株主に、dポイントを1,500ポイント進呈します。

 ただし、1つ注意が必要です。今から投資しても、優待が得られるのは、2年以上先の2023年3月末からとなることです。今から投資しても、今期末(2021年3月末)、来期末(2022年3月末)は保有期間が2年に満たないので優待は得られません。ただし、配当金は得られます。高配当利回り株として投資しているうちに、2年後からdポイントの優待も加わると考えてください。

 昨年NTTは、上場子会社NTTドコモに対してTOB(株式公開買付)を実施し、完全子会社にしたことで話題になりました。ドコモを取り込んで、NTTグループの総合力を強化したメリットは大きいと考えます。

 NTTが分割民営化されたのは、通信の競争促進をはかる目的からです。NTTドコモを分離上場したのは、ドコモがNTTの完全子会社では、NTTグループの力が強くなりすぎると考えられたからです。そのドコモが、再び完全子会社となった意義はNTTグループにとって大きいと考えられます。

 国内通信インフラを保持するのに欠かせないNTT東日本・西日本に加え、収益頭のNTTドコモを完全に取り込み、さらにNTTデータなどの成長事業を有するNTTグループの投資価値は高いと判断しています。

 なお、私はNISAで投資するのは、優待がない高配当利回り株も良いと考えています。2月9日時点で予想配当利回りが4.8%(株価517円、1株当たり配当金25円)の三菱UFJ FG(8306)なども、NISAでの長期投資に有望と判断しています。

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