1月の陽転は円安反転の兆しか?

 1月は、結局104円台後半で取引を終えたことから、1月の月足は昨年8月以来、5カ月振りに陽線(*)となりました。2月は、この陽線転換が、長らく続いたドル安・円高が反転する兆しになるのかどうか、すなわち円安が2月以降も持続するのかどうかが注目です。

(*陽線・・・始値よりも終値が高いこと。1月末が月初よりもドル高・円安で終わること)

 ドル/円は1月の最後の3日間で1円30銭ほど円安に動きましたが、その要因は、米株式市場で空売りヘッジファンドを標的にした個人の投機的な取引に制限がかかり、そのことを嫌気した米株の急落によるドル高、あるいは月末のポートフォリオ調整のための円売りによるとの見方があり、一時的な動きの可能性もあります。ただ、米株式市場では個人取引が政治問題化しており、また、個人取引を対象としたスマートフォン専業証券会社が資金繰りに窮しているなど、この手の話はバブルになるとよく出てくる話で、今後も相場の波乱材料になる可能性もあるため、この動きには留意しておく必要があります。

 長らく続いてきた米金融緩和の追い風を受けた株高、ドル安の動きが、バイデン新政権への期待とワクチン接種開始への期待から、1月にはいって一段の株高となりました。この動きが個人の投機的な取引をきっかけに、長期間にわたる低金利政策による株高への懸念が高まり、これまでのポジションの調整が強まったという見方があります。

 ドルについては、経済回復の期待から米長期金利が上昇したため、株高が続く中でいち早く反転し、ドル高の動きとなりました。

 もし、株もドルもポジション調整の動きが中心だとすると、調整が終われば、あるいは懸念が払拭(ふっしょく)されれば、再び、株高、ドル安の動きに戻ることが予想されます。

 なぜなら、大枠のドル安の構図は変わっていないからです。すなわち、イエレン新財務長官は財政拡大路線(ドル安要因)を明言し、為替政策についてもドル安誘導を求めないと述べながらも、ドル高は米国の国益とも主張していません。パウエル議長は1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で「新型コロナウイルスの再拡大で、景気回復のペースは緩やかになっている」と指摘し、「雇用最大とインフレ2%超の目標達成まで強力な金融支援を続ける」と強調しました。景気回復による早期縮小論については、雇用情勢の厳しさを指摘して「時期尚早だ」と明確に否定しています。

 これらのドル安の構図の中で、経済政策期待やワクチン普及期待でどこまでドル高への持続力があるのかが今後の注目ポイントです。

 米新政権の経済対策の進捗状況やコロナ感染の状況によって相場が揺さぶられる状況は今月も続きそうです。経済対策の合意やワクチン普及が遅れれば、1月のドル高要因が剥落することになり注意が必要です。

 新政権の1.9兆ドルの追加経済対策については、いまだ共和党との交渉は難航していますが、民主党は財政調整措置の発動で予算を成立させると主張しています。共和党の反発を無視し、規模を妥協せずに成立させるのかどうか注目です。また、トランプ大統領の弾劾裁判については、マーケットには今のところ無風ですが、経済対策の議会交渉の足かせにならないか気になるところです。

 コロナ感染拡大については、米国の感染者や死者数の増加スピードは鈍化してきていますが、ワクチンの普及が遅れているため、ワクチン普及は相場のポジティブ材料としては力不足となってきています。

 ワクチン普及は米国だけの話ではありません。日本のワクチン普及も現在の世界のワクチン争奪戦や生産体制の遅れをみていると、政府予定より遅れそうな気配です。緊急事態宣言の期間延長は、今の世界の状況では、今後の進展次第では日本売り材料(株安、円安、債券安)として効いてくるかもしれないため、マーケットの材料として留意しておく必要がありそうです。