消費回復トレンドが追い風、共同購入型EC事業も依然有望
中国EC(ネット通販)銘柄の20年10-12月期決算の売上高、純利益について、BOCIは安定成長を見込んでいる。一大セールイベント「双11」(11月11日の独身の日)の好調に示される消費の段階的な回復が背景。この先のEC市場に関しては、ライブコマースの台頭を受け、ソーシャル・娯楽要素がさらに強まるとみる。また、コミュニティー共同購入型の生鮮品EC事業も勢いを維持すると予想。大手各社がサプライチェーンやカバーエリアの拡大に力を入れる中、この分野では業界集約化がさらに進む見通しを示した。個別ではJDドット・コム(09618)、ピン多多(PDD)、アリババ集団(09988)の3社をトップピックとし、この順番で選好している。
中国の小売売上高は20年に前年比3.9%減の39兆1,980億元にとどまったが、ネット売り上げに限ると、同10.9%増の11兆7,600億元(国家統計局発表)。うちネット上でのモノの売上高は14.8%増の9兆7,590億元に上り、小売売上高全体に占める割合は24.9%に達した(前年は20.7%)。新型コロナを契機とした消費者のEC利用への順応や感染再拡大への懸念を受け、BOCIは21年もネット通販市場の活況が続くとの見方。特に地方住民への浸透や越境ECの利用拡大が原動力になるとみている。
生鮮食品などの共同購入型EC事業は、スケールメリットが小さく、新規参入が容易なため乱立状態にある。事業者側としては低価格志向の顧客を囲い込み、つなぎ止めるために、補助金の提供が不可欠。ただ、BOCIはこの先短期的には過当競争が続くとしながらも、補助金額がすでに下がりつつあることや、一部事業者が個客基盤を拡大し始めている現状を指摘。今後は業界集約化が進行するとみる。この分野で成功するためには、◇生鮮食品の供給力、◇配送およびフルフィルメント(注文から配達までに必要な業務全般)能力、◇営業効率とグループリーダー管理の手腕が求められるという。
BOCIはJDドット・コム、ピン多多、アリババ集団の順で選好しているが、うちアリババ集団については、21年度第3四半期(20年10-12月)に前年同期比30%の増収を見込む。ハイパーマーケット大手の高キン零售(06808)の連結化が一因。一方、JDドット・コムは通信機器・電子機器などの販売好調を背景に、10-12月に28%増収を達成するとみている。JDは関してはまた、生鮮品流通サービスの中国地利(01387)の買収や、興盛優選への出資を通じ、共同購入型ECのサプライチェーンやカバーエリアを大きく拡大していると指摘。今後は同市場で一躍優位に立つ可能性に言及し、20-22年の利益見通しを増額修正した。
一方、レーティング見直しにつながる可能性があるECセクターのリスク要因としては、政策的な締め付け強化や、国内経済の予想外の低迷を受けた需要の委縮、市場の競争の激化による収益成長への影響を挙げている。