気になるあの本をチェック!
逃げて勝つ 投資の鉄則-大負けせずに資産を築く10年戦略
答えてくれた人
日経BP 日本経済新聞出版本部 第1編集部 編集委員 渡辺一さん
著者ってどんな人?
田中泰輔(たなか たいすけ)さん
著者は、35年にわたって米欧日のメガ金融機関9社の市場戦略部門を渡り歩き、2018年に独立して田中泰輔リサーチを設立されました。楽天証券経済研究所の客員研究員でもあります。これまでメディアでは、外国為替の動向に関するコメントで著者の名前を見かけた方も多いと思いますが、「外為の専門家」というわけではなく、ストラテジストとして市場動向の予測や戦略業務を担当されてきました。本書は田中さんにとって25年ぶりの著作となりますが、不本意な本は出せないという強い意志をお持ちで、こだわりの人でもあります。
どんな人にオススメ?
・投資初心者
・投資を再スタートさせようとしている方
・売り時に悩むことが多い方
この本の、ここが読みどころ!
投資はそれぞれの人の懐事情でバラバラに始めますが、値が下がるとの情報が伝われば、そろって一斉に売却します。しかし、どんな情報で売却すればよいのか、シグナルの読み解き方をわかりやすく指南する本はなかなかありませんでした。この肝心なところを、投資の初心者でも容易に理解できるよう、噛み砕いて説明したのが本書です。専門的な用語には説明を加えました。初心者だけでなく、投資を再スタートさせようという方や、20年、30年と投資を続けてこられたベテランの方でも学べるところの多い深みのある内容になっていると思います。
本書の目指すところは、高いリスクをとって短期売買で稼ぐノウハウの解説ではなく、リスクを抑えながら中長期で資産を築くための知恵、考え方を示すことです。解説の軸となる節をいくつかピックアップしてご紹介しましょう。
まずは、過去の相場から重要な教訓を学ぶ第1部の冒頭「<教訓1> 10年に1度以上来る相場暴落」です。長期的に見ると相場は大きな変動を繰り返しており、コロナショック以降の世界的な株高も、永遠に続くわけではないことを認識できます。長い時間をかけて含み益を積み上げても、大きな暴落に遭遇すると、一瞬にして吹き飛んでしまいます。それをどう回避するか、それが本書の最大のテーマです。
「<教訓5> 《長期+分散+積立》投資の罠」では、近年の投資勧誘でよく使われてきた投資家を安心させる3つのキーワード(長期、分散、積立)にもリスクが潜んでいることを説明しています。33、34ページの図表では、積立投資を長期間続けた結果がどうだったか、日米ともに明快に示されています。「好いとこ取り」の説明には落とし穴が隠れていることが多く、投資家は自ら考えて落とし穴を回避するほかないということです。
過去の8つの教訓を踏まえて、投資にどう臨めばよいのかを解説したのが第Ⅱ部の7つの鉄則です。「景気循環」という言葉がありますが、投資もサイクルを捉えることがもっとも重要だというのが著者の主張です。「<鉄則2> 投資の時間差サイクルこそが最強アプローチ」は、その中核となる部分で、71ページの図表には米景気、株価、長期金利、ドル円のサイクルが1つにまとめられている優れものです。ここでサイクルの基本形を頭に刻めば、あとはどう応用するかです。
第Ⅱ部で掲げる7つの鉄則は、どれも著者が35年間最前線で培ってきた投資のエッセンスを集約したものなので、どれも投資戦略を立てるうえで欠かせない内容が盛り込まれています。また、第Ⅲ部は、投資の実践編です。とくにウィズコロナからポストコロナに向かう過程で見ておきたいポイントが具体的に書かれており、注目です。
先進国を中心に空前の景気対策、金融緩和が実施され、株式市場は底上げされてきました。こうしたときこそ、先行きを冷静に判断し、的確に「逃げる」ことが、資産形成にとって大切です。本書は、その判断力を磨くために格好の一冊です。
編集者の制作秘話
著者の田中さんは、これまでプロ向けに発信することが多かったこともあり、初心者にも伝わるよう噛み砕いて書いていただくよう繰り返しお願いしました。ベテラン投資家も納得する内容で、かつ初心者にも分かりやすいという難しい課題に挑戦していただき、ご苦労をおかけしました。
今は、まさに「いつ売るか」を決断するのが難しいときです。本書が示す教訓と鉄則を、投資判断の一助としてお役立てください。
田中泰輔さん本人がYoutubeで著書を解説!
[動画で解説]「逃げて勝つ 投資の鉄則」今すぐ分かる・役立つ補講