9:電気自動車増産期待などでレアアースが急騰
米国、中国が温暖化ガス排出削減に動き始めたこともあり、世界的に電気自動車(ハイブリッド車や燃料電池車を含む)シフトが加速し始めています。
高性能の電池やモーターにはレアアースが不可欠とされており、その生産の多くを中国が担っています。中国は以前、レアアースの輸出を制限した際、価格高騰やサプライチェーン見直しで需要減退を招いたこともあり、輸出制限には慎重とみられていますが、需要の強さと国際情勢によっては戦略物資として管理し、その結果、価格が高騰する可能性もあると考えられます。
10:イランが孤立を深め中東紛争リスクが高まる
米国の政権交代を受け、米国とイランの関係が改善に向かうとの期待もありますが、従来は対立していたイスラエルとアラブ諸国が、対イランでの利害一致などもあり関係改善に動いたことで、米国としてはイランと対立するイスラエル・アラブ諸国側に付かざるを得ません。
イランも関係改善を期待しているようですが、失望する結果となり、また2021年に実施予定のイランの大統領選挙では対外強硬論が世論をリードしやすいとみられるため、一段とイランが強硬路線に振れることも考えられます。中東情勢のさらなる緊張は、世界の金融市場にもネガティブな影響を及ぼす恐れがあります。
新たな視点で客観的に状況を整理できるチャンス
以上が大和アセットマネジメントの考える2021年の10大予測です。実際のところ、1年後に10大予測がズバズバ当たることはあまりありませんが、予想外のことが起こったとしても、意外と着眼点や考え方は的を射ていたりします。年末年初に1年を考えることは、これまでの状況やポジションといった過去に引きずられることなく、新たな視点で客観的に状況を整理できるというメリットがあるのかもしれません。
ぜひ、皆さんも皆さんなりの10大予測を考えて、1年後に振り返ってみてはいかがでしょうか。きっと新たな気づきがあると思います。
長野吉納(ながの・よしのり)プロフィール
大和アセットマネジメント株式会社調査部長。
1991(平成3)年大和証券投資信託委託株式会社(現大和アセットマネジメント株式会社)へ入社。アナリスト・ファンドマネージャーを経て、現在はストラテジスト業務の一方調査部長として国内外のエコノミスト・ストラテジストを統括する。入社以来約30年にわたり一貫して株式市場を中心とした金融市場でのグローバルな調査・運用業務に従事している。