ESG重視の投資で「超過リターン」を狙えるのか

 世界の投融資業界では、持続的成長を目的としたESG(環境・社会・企業統治)重視の姿勢がグローバルスタンダード(世界的な潮流)となっています。ここ数年、欧米を中心に機関投資家と企業との対話に幅が広がり、損益計算書など財務諸表だけで企業価値を測らず、新たな物差し(非財務諸表)を加える動きが強まっています。

 国内でも、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、第一生命保険、日本生命保険など大手機関投資家が環境・社会への貢献度や企業統治を重視した長期投資を積極化しています。こうした取り組みは、2006年に国連(当時:アナン事務総長)が提案したUNPRI(国連責任投資原則)を受けたSRI(社会的責任投資)の普及で始まりました。

 今春以降は、気候変動リスク改善への貢献度やコロナ禍での社会・健康・衛生への貢献度が注目されています。

 逆に言えば、地球温暖化対応に消極的な企業(例:温室効果ガス排出や環境汚染をコントロールしない企業)、健康被害が懸念される企業(例:たばこ業界)、モラル低下を懸念させる企業(例:ギャンブル、武器製造、少年少女を酷使する奴隷的慣行に依存する企業)、企業統治に問題がある企業(社外取締役導入や女性活用を軽視する企業)などはネガティブ・スクリーニングで土俵外に追いやられる可能性があります。

 図表2は、ESGを重視する米国企業に分散投資する米国ETF(上場投資信託)と米国市場平均(S&P500指数)の相対推移を示したグラフです。

<図表2>ESG重視型投資ETFに超過リターンがみられる

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019年12月31日~2020年12月2日)

 これまで「ESG投資は超過リターンに結びつくか」との不確実性がありましたが、コロナ禍を契機に上記ETFは優勢となっており、ESG重視が市場で評価されてきた例として注目したいと思います。

 特に環境関連(クリーンエネルギー)業界は、米大統領選挙で当選を確実にしたバイデン民主党政権のパリ協定復帰(公約)を歓迎しています。GSIA(世界持続的投資連合)によると、世界のESGマネーは30兆ドル超(2018年)と2年で4割増という高成長を遂げており、今後も中長期で拡大していく可能性が大きいとみられています。