国内経済の回復が追い風、ファンダメンタルズ改善も個別の格差拡大へ

 中国経済は世界に先駆けてパンデミック後の回復軌道に乗っており、21年もこの流れが続く可能性が高い。BOCIはマクロ経済環境の回復に伴い、商業銀行のファンダメンタルズも“正常化”に向かうとの見方。21年にはカバー銘柄の引当前業務純益の平均伸び率が前年比10.7%(20年予想は5.4%)、増益率が同10.2%に加速する見通しを示し、平均ROE(株主資本利益率)に関してはほぼ前年並みの10.8%との予測を示した。銀行セクターに対するマーケットの信頼度がこの先再び高まるとみて、セクター全体の先行きに対して強気見通しを付与している。半面、各銘柄の株価パフォーマンスについては、個別にある程度明暗を分ける可能性に言及している。

 BOCIは銀行の資産の拡大が続く見通しを示しながらも、21年に関してはやや減速すると予想。カバー銘柄の貸出伸び率について平均12.5%(20年予想は12.9%)を見込む。製造業やインフラ建設業、中小企業、民営企業向け融資の比重が高まる見通しという。

 国内の大手工業企業の債務返済能力はすでに回復に向かっており、銀行資産の質に関する先行指標も改善傾向。BOCIはカバー銘柄の21年の不良債権比率について、前年並みの平均1.51%を予想している。ただ、一部の中小銀行に関しては不良債権圧力が残るとの見方。特に一部の社債デフォルトや、伝統的なハイリスク業界、あるいは政策支援が及ばず逆風下にある企業向けの融資に関し、潜在リスクを指摘している。

 BOCIはこの先、銀行の金利決定力が段階的に高まるとみて、カバー銘柄の純金利マージン(NIM)が21年に1.97%に改善するとみる。また、銀行各行が預金コストの抑制に力を入れると予想し、その結果次第で個別のNIMに格差が生じるとの見方。資金運用勘定(IEA)と資金調達勘定(IBL)の最適化がNIM改善のカギを握るとしている。

 21年にはまた、代理業務やウェルスマネジメント(富裕層向け資産運用・管理)業務が好調を維持し、クレジットカード業務や決済手数料も持ち直す見込み。カバー銘柄の役務取引等利益は前年比7.4%増と、前年比3.3ポイント加速する見通しという。

 一方、21年の業績はこれまで以上に、個別に明暗を分ける見込み。融資構造の改善に取り組むとともに不良債権処理を積極的に進めてきた銀行は、金融緩和政策がこの先終わりを迎えても、資産の劣化圧力を抑制できる可能性が高い。

 銀行銘柄の現在株価は20年予想PBR(株価純資産倍率)で平均0.54倍、21年予想PBRで同0.49倍の水準。BOCIは個別では、フィンテックや資産管理業務に強みを持つ招商銀行をトップピックとし、中国郵政儲蓄銀行(01658)を2番手に挙げた。資産の健全性や預貸率の改善、リテール業務へのシフトなどが理由。このほか、中国農業銀行(01288)、中信銀行(00998)、中国建設銀行(00939)、中国光大銀行(06818)、中国工商銀行(01398)の株価の先行きに対しても強気見通しを付与している。