<参考>電子部品世界市場の動向

1.電子部品世界出荷金額は、2020年5月を底に回復中

 電子部品世界出荷金額の動きを見ると(グラフ3、4)、直近では2018年10月をピークとして下降局面入りしました。スマホ販売が伸び悩んだこと、それに続いて自動車販売も鈍化したためです。新型コロナウイルス感染症が拡大し始めてからは、一時的な在庫積み増しはあったものの、各種電子機器工場や自動車工場の稼働率低下が電子部品出荷に響きました。

 ただし、2020年5月に大底を付けた後は、各業界の工場再稼働、サプライチェーンの回復によって、世界の電子部品需要は回復に向かっています。

グラフ3 電子部品世界出荷金額

単位:億円
出所:電子情報技術産業協会

グラフ4 電子部品世界出荷金額:前年比

単位:%
出所:日本情報技術産業協会資料より楽天証券作成

2.電子部品市場は価格低下に注意したい

 もっとも、電子部品世界市場の回復度合いは、市場全体で見ると必ずしも急なものではありません。

 グラフ5~9は、代表的な電子部品の一つであるセラミックコンデンサの日本における生産動向を示しています。セラミックコンデンサの中でもチップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、電圧制御などに使われ、様々な電子機器に多用されています。主な需要分野は、スマホ、パソコン、自動車などで、高級品は主に日本で生産されています。

 グラフ5、6はセラミックコンデンサの生産数量を表したものですが、景気回復を反映して順調に回復していることがわかります。ところが、生産金額のグラフ(グラフ7、8)は頭打ちになっています。これは単価下落によるものです(グラフ9)。セラミックコンデンサの価格は、2017年頃からTDK、太陽誘電と顧客企業との個別交渉による値上げが始まり、2019年年初からは村田製作所が全顧客向け全品種で一斉値上げに踏み切りました。ただしその後は、民生向け(スマホ向けなど)、自動車向けの双方で、最終製品の販売伸び悩みを理由とした値下げが行われるようになりました。この単価下落がセラミックコンデンサ、ひいては電子部品市場全体で生産出荷金額を抑えていると思われます。

 ただし、前述のような村田製作所とTDKのMLCCの販売動向を見ると、セラミックコンデンサの統計上の生産金額が今年9月分からは比較的はっきりとした前年比プラスになる可能性があります。

グラフ5 セラミックコンデンサ:生産数量

単位:1,000個
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成

グラフ6 セラミックコンデンサ生産数量:前年比

単位:%
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成

グラフ7 セラミックコンデンサ:生産金額

単位:百万円
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成

グラフ8 セラミックコンデンサ生産金額:前年比

単位:%
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成

グラフ9 セラミックコンデンサ:生産単価

単位:円/個
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成

3.電子部品メーカーを選ぶ場合は、各分野のトップ企業を選びたい

 電子部品は半導体(特にロジック半導体)に比べ顧客からの値下げ圧力が強いことが特徴です。そのため、銘柄選択する際には、市場シェアの高さ、値下げを吸収する収益力と品揃えの多さに着目したいと思います。私が村田製作所とTDKに継続的に注目しているのは、この理由によります。

本レポートに掲載した銘柄:村田製作所(6981)TDK(6762)