市場は、米大統領選挙はジョー・バイデン民主党候補勝利がほぼ確定したとして、動き始めました。そこに、米製薬大手ファイザー社が、治験中の新型コロナウイルスのワクチンに90%超の効果があると発表。相場は米選挙とワクチンという二大材料を一気に迎え、沸き立ちました。ワクチン普及となれば、いよいよ「コロナ禍の終わりの始まり」です。脱コロナの移行期を前提に、2020年末まで、そして2021年3月の年度末までの、相場イメージを整理します。
バイデン米政権でどうなる?
「バイデン大統領」が率いる政権が誕生すれば、米国は政策について予見可能な国に戻るでしょう。民主主義、国際同盟関係、地球環境、そしてコロナ対策の観点では、軋(きし)みが減ると期待されます。ただし辛口の現実論に立てば、新政権下の4年も、こうした諸問題は、すっきり改善することはなく、悪化の緩和までとみるのが妥当と考えます。米政府の中国に対する姿勢も、歴代民主党の寛容な姿勢が時間の経過と共に禍根を大きくする流れでした。
議会選挙では、民主党の得票が予想ほど伸びませんでした。下院は同党が過半数を確保しても、上院は共和党が制する可能性が相対的に大きいとみられます(当レポート執筆時点。結果確定は一部決選投票の2021年1月5日になる見込み)。民主党が大統領も上下院も勝ち取る一方的結果でなくなると、民主党的な「大きな政府」による財政積極化、大企業・富裕層・株式キャピタルゲインに対する増税、金融機関やプラットフォーマーに対する規制強化に、一定の歯止めがかかるとの観測が出ています。筆者は、民主党勝利体制でも、これら民主党的政策の実現には制約があるとの想定でしたが、結果的に市場の観測も近いところに着地しつつあります。
株式相場にとっては、新政権下で投資の不確実性が減り、上値志向を抱きやすくなります。他方で、民主党政府・議会体制下で懸念された長期金利上昇や、積極財政による早期景気回復が招く投資ローテーション(割高なグロース株を売り、割安なままの景気株・バリュー株に乗り換えること)も、せっかちに進むことはなさそうと考えられました…ワクチンの朗報が出るまでは。