島忠のTOB価格は引き上がる可能性も

 ここで、今回の島忠をめぐるTOB合戦を、先ほどのポイント(1)と(2)の観点でも見ていきたいと思います。

 まず、(1)については、ニトリとDCMはともに、島忠の完全子会社化を目指しており、最低買い取り目標は50%取得に設定しています。つまり、両社とも100%取得を目指して、取得株数は多ければ多いほど良いことになり、全部買い付けになります。そのため、今後の島忠の株価は、引き上げられるかもしれないTOB価格に合わせて推移しやすいと考えられます。

 次の(2)についてですが、DCMのTOBは、島忠との合意のうえで実施されており、友好的TOBです。それに割って入ってきたニトリは、普通に考えれば敵対的TOBということになります。

 ただし、ニトリは島忠の警戒を解くために、PB(プライベートブランド)の共同開発や、経営体制についても柔軟な姿勢を見せるなど、お互いのメリットや今後の方針について提案を行っており、島忠もニトリのTOB提案に対して、「真剣に検討する」と発表しています。

 したがって、ニトリが敵対的TOBとなるかは、今後の島忠の判断次第です。ただし、仮に島忠がニトリのTOB価格を下回るDCMを選んだ場合、ニトリや島忠の株主に対して合理的な説明が必要になります。ニトリも島忠の判断にかかわらずTOBを続ける姿勢を見せているほか、DCMのTOB価格に対して、島忠の株主の一部(旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスなど)が「安過ぎる」と反対の意見を出していることもあり、DCMへのTOB価格引き上げ圧力が高まることも考えられます。