今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」を選択したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」を選択した人の割合と、NYダウの推移(月足 終値)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2020年8月の調査で「アメリカ」を選択した人の割合は、65.3%でした。この値は、楽天DIの調査がはじまった2008年10月以来の最高です。それまでの最高は、英国のEU離脱をめぐる国民投票が行われるおよそ半年前の、2015年11月につけた64.1%でした。

 2016年6月に行われた英国のEU離脱をめぐる国民投票の結果は、英国国民はEUを離脱することに賛成する、というもので、世界に強い不安を与えました。世界屈指の経済規模を誇り、世界経済のけん引役と言われたアメリカへの投資意欲にもマイナスの影響が及び、投票直後に行われた楽天DI調査では、「アメリカ」を選択した人の割合は28.6%まで急低下しました。

 しかし、急低下した後は、NYダウなどの米国の主要株価指数の上昇とともに、みるみる回復していきました。2017年1月に誕生したトランプ政権のもと、法人減税などが功を奏し、米国の主要株価指数はどんどんと上昇していきました。この上昇が日本の個人投資家の関心を誘ったことは、上図の2017年以降の2つの値の連動性の高さから、想像できます。

 2020年に入り新型コロナウイルスの感染拡大が起き、パンデミック化し、同ウイルスが世界中で猛威をふるう世の中になりました。株価は一時的に反落したものの、株価回復時、これまで以上に、アメリカに投資をしてみたいと思う人の割合が増え、2020年8月、ついに過去最高値を上回ったのです。

 つまりは、アメリカに投資をしてみたいと思う人の割合は、おおむね“株価次第”と言えるわけです。今後、株価が上値を伸ばせば、アメリカに投資をしてみたいと思う人の割合はさらに増加し、過去最高を更新する可能性があります。

 65.3%だった8月は、全回答者6,446人中、4,215人が「アメリカ」を選択しました。一方、同月の「日本」は36.8%(2,373人)でした。今後、投資対象の選好における“日米格差の拡大”も、注目しなければなりません。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年8月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年8月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成