為替DI:「円高」警戒モード、ほぼ解除へ

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 

「9月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 8月末に楽天証券が実施した相場アンケート結果によると、回答頂いた個人投資家6,446人のうち約42%(2,713人)が、9月のドル/円は「ドル安/円高に動く」と予想していることがわかりました。

「円安に動く」は最も少ない約24%(1,545人)で、「動かない(わからない)」は約34%(2,188人)でした。

 DI(円安見通しと円高見通しの差)は▲18.12で 6カ月連続のマイナス。マイナスは円安見通しを持つ個人投資家が円高見通しを持つ個人投資家より少ないことを意味しています。ただし、マイナス幅は先月に比べて15ポイントも大きく縮小しています。円安見通しもここにきて、少しずつ増えています。

 8月28日、安倍首相は辞意を表明しました。第1次政権と合わせると8年8カ月にわたった歴代最長政権は、ついに幕を閉じることになりました。日本の政治体制は、次の総理大臣が誰になろうとも変わることはなく続いていくのでしょう。アベノミクスはどうか? アベノミクスは「安倍首相と共に去りぬ」というのが海外投資家の共通認識です。

 アベノミクス以前の日本は、ゼロ金利、ゼロインフレそしてゼロ成長の、経済的にも政治的にも何も起きず、注目されることもありませんでした。皮肉にも、そのために円は「セーフヘブン(安全資産)」と呼ばれ、逃避マネーの受け皿となって2011年には1ドル=75円まで円が買われたこともありました。

 そこに登場した安倍首相は、日本の政治リーダーとしてだけではなく、日本の経済のオピニオンリーダーとなって世界からマネーを惹きつけることに成功しました。日本はリーマンショック後の世界経済のけん引役として世界的な期待が集まり、円安も大目に見られました。国内的にも、アベノミクスがバブル崩壊後から長期間続いていたデフレを終わらせる状況をつくったことは、日本経済にとっては非常に大きかった。プライマリーバランスの赤字もある程度まで縮小させることもできました。

 次の首相はアベノミクスを継承するでしょうが、アベノミクスが発表された当時に日本経済に巻き起こった熱狂を復活させることはできません。アベノミクスは死なずとも、消え去る運命なのです。

 その結果、日本経済の勢いは失われ、財政健全化の道のりもはるか先に遠ざかることになります。円は再び「セーフヘブン」の位置に戻り、世界情勢のストレスが高まるなかで、大幅に円高が進む可能性があります。

 2011年に75円台まで円高だったドル/円は、アベノミクス時代の2015年には125円台まで円安に動きました。そのちょうど中間点の100円まで戻ってもおかしくはないと考えています。

 8月のユーロ/円の終値は126.40円。7月終値に比べて約1.70円のユーロ高/円安でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 8月末に楽天証券が実施した相場アンケート調査の結果によると、回答頂いた個人投資家6,446人のうち約27%(1,732人)が、9月のユーロ/円は「ユーロ安/円高に動く」と予想していることがわかりました。

 一方で「ユーロ高/円安に動く」は、先月よりわずかに増えたものの、依然として最も少ない約22%(1,391人)。「動かない(わからない)」は、約51%(3,323人)でした。

 ユーロ/円のDI(円安見通しと円高見通しの差)は▲5.29で6カ月連続のマイナス。マイナス幅は先月に比べ約6ポイント縮小しました。マイナスはユーロ高見通しを持つ個人投資家がユーロ安見通しを持つ個人投資家より少ないことを意味しています。マーケットのユーロ/円はこの6カ月間で、終値だけで比較しても8円近くユーロ高に動いています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 8月の豪ドル/円の終値は78.13円。7月の終値に比べて約2.50円の豪ドル高/円安でした。8月末に楽天証券が実施した相場アンケート調査の結果によると、回答頂いた個人投資家6,446人のうち約25%(1,621人)が、9月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高に動く」と予想していることがわかりました。

「豪ドル高/円安に動く」は約20%(1,308人)で最も少なく、「動かない(わからない)」は約55%(2,660人)で半数を超えています。

 豪ドル/円のDI(円安見通しと円高見通しの差)は▲4.85で6カ月連続のマイナス。マイナス幅は先月から約9ポイント縮小しました。マイナスは豪ドル高見通しを持つ個人投資家が豪ドル安見通しを持つ個人投資家より少ないことを意味しています。マーケットの豪ドル/円はこの6カ月間で、終値だけで比較して12円も豪ドル高に動いています。