日経平均の見通し 

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「堅調な相場環境でDIが大きく改善」

 今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がプラス0.74、3カ月先はマイナス1.64となりました。前回調査の結果がマイナス35.60、マイナス25.74でしたので、それぞれDIの値を大きく改善させました。1カ月先DIがプラスに転じるのは5月調査以来、2020年に入ってからは2度目です。

 回答の内訳グラフで具体的な状況を見てみると、1カ月・3カ月ともに中立派が約半分を占めており、相場の先行きに対して目立った方向性が感じられないものの、前回調査で少数となっていた強気派が盛り返しており、目先の相場が下振れする警戒感がかなり後退している印象です。

 今回のアンケート期間(8月31日~9月2日)は、前週末の安倍首相の辞任報道を受けて株式市場がざわついた直後に実施されたのですが、国内株市場は早い段階で落ち着きを取り戻し、日経平均も2万3,000円台で推移していたことも安心感につながった模様です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 さらに、アンケート期間終了後の9月3日の取引では、日経平均の終値が2万3,465円となり、新型コロナウイルスの感染拡大で急落する前の水準(2月21日の2万3,386円)を超えてきました。

 8月の日本株の上昇は米国株高にけん引されてきた面がありますが、その米国株市場では9月に入って急落する場面を見せています。とりわけ米NASDAQの下げは大きく、9月3日と4日の2日間で6%以上の下げとなっています。今後の相場を見ていく上で気がかりなのは、こうした米国株急落が「健全な調整」なのか、それとも「相場の変調」なのかです。

 確かに、最近までの米国株市場はNASDAQやS&P500が連日で史上最高値を更新するなど、過熱感を指摘する声も多く、そろそろ調整局面が来てもおかしくはない状況でしたし、米雇用統計といった経済指標のほか、NYダウの銘柄入れ替えが実施されたり、アップル株やテスラ株の株式分割の影響があったり、米ネット証券のロビンフッドに対してSEC(米証券取引委員会)が注文処理の開示をめぐって調査に入ったと報じられたり、米ハイテク株の急騰の影にソフトバンクグループの関与が報じられるなど、売りの口実となるきっかけに事欠かないタイミングでもありました。

 そのため、しばらくは値動きが荒くなる可能性はあるものの、今のところは「健全な調整」の範囲と考えることができます。

 ただし、9月中旬以降のスケジュールを確認すると、ティックトック(TikTok)の米国事業売却交渉期限(15日)をはじめ、FOMC(連邦公開市場委員会)(15~16日)や1回目の米大統領候補討論会(29日)など、米国では注目のイベントが相次ぎます。イベントの多さによって積極的に上値を追いづらくなるほか、下げる場面が増えるなど、調整の長期化・深押しの可能性があり、「相場の変調」となりかねない展開には注意しておきたいところです。