3)11月頃に予想されるプレイステーション5発売
ソニーのPS5発売が2020年年末に予定されています。私の予想では11月発売です。PS5のCPUは、AMDのRyzenをベースとした新CPUコア「Zen 2」(8コア)のカスタマイズで、TSMCの7ナノラインで生産されます。GPUもAMDの最新GPUのカスタマイズで、これもデザインルールは7ナノです。
巣ごもり需要の効果もあり、PS5は価格は未公表ながら相当大きな需要が予想されます。2013年11月発売のPS4の初年度(2014年3月期)販売台数は750万台、2015年3月期は1,480万台でしたが(日本での小売価格は3万9,980円)、PS5は私の予想では今期販売台数は1,000万台、来期は2,000万台です。楽天証券ではスタンダードモデル(ブルーレイディスクプレイヤーを装備)5~6万円、デジタル・エディション(BDがないダウンロード専用モデル)4~5万円と想定していますが、これに対して1万円程度高くとも、巣ごもり消費が続くならば好調に売れると思われます。
PS5が好調に売れると、ゲーミングPCの売れ行きは悪影響を受ける可能性があります。安いもので10万円台、高いものでトータルで50万円以上するゲーミングPCの売れ行きが悪化することは、パソコンメーカーとAMD、インテルのようなCPUメーカーにとって問題になると思われます。
そこで予想されるのは、AMDの5ナノ進出です。AMDは7ナノCPUをTSMCに生産委託していますが、これを5ナノにアップグレードすることが2021~2022年に起こり得ると思われます。
また、PS5で超高精細画像が一般的になれば、画像編集用PCの分野でも性能向上の動きが出てくる可能性があります。
加えて、PS5はHDDに替えて高速SSD(NANDを組み合わせた記録媒体)を搭載します。そのため、パソコンのSSD搭載が増えると思われます(すでに、ノートブック、デスクトップともにHDDに替えてSSDを搭載する傾向が増えています)。
このようにPS5がヒットすれば、CPU、メモリともに、先端半導体の世界に刺激を与えると思われます。
4)10-12月期に予想される新型コロナウイルス感染症のワクチン上市
新型コロナウイルス感染症を予防するためのワクチンの開発では、有力候補である米モデルナ、米ファイザーの2つのワクチンが10-12月期に臨床試験フェーズ3を終える予定です。臨床試験で良好な結果が得られたならば上市され、実際に大勢の人々に投与されることになります。そこで効果が確認され、かつ重大な副作用がないならば、各国の経済は段階的に正常化に向かうことになると思われます。
ただし、上市後に投与した場合に効果が十分でない場合や、重大な副作用が見つかった場合は(臨床試験では見つからなかった副作用が上市後に大勢の人に投与された後に見つかることは新薬の世界ではあることです)、新型コロナ禍に対応するための巣ごもりや、仕事、学習、エンタテインメントのオンライン化が長期化し、更に常態化する可能性があります。
経済が正常化する場合は、景気全般が急回復することに伴って、5Gやパソコン、データセンターだけでなく、自動車向け、家電向けなども含めて、半導体需要が幅広く回復し、半導体設備投資も増加することになると思われます。一方、巣ごもりとオンライン経済が長期化し更には常態化する場合も、5Gを含む大規模ネットワークとテレワークシステムの構築、パソコン需要とデータセンター需要の増加によって、特に先端半導体需要が増加すると思われるため、これによって半導体設備投資も増加すると思われます。
どちらの場合でも半導体需要と半導体設備投資は増加すると予想されますが、第一弾のワクチンの成否がわかることで相場の方向性がある程度クリアになり、相場がアク抜けする可能性があります。
6.注目銘柄
楽天証券でカバーしている半導体製造装置メーカー5社の今後6~12カ月の目標株価は以下の通りです。今回は変更しません。5社とも投資妙味を感じます。
東京エレクトロン 3万7,000円
アドバンテスト 8,000円
レーザーテック 1万3,000円
SCREENホールディングス 6,500円
ディスコ 3万5,000円
東京エレクトロン
今1Q決算を見ると、業績は順調に回復中です。9月15日以降の半導体設備投資についても、前工程の各装置で引き合いが強い状態が続いているもようです。来期も業績順調が予想されます。
表5 東京エレクトロンの業績
アドバンテスト
会社側の見方では、9月15日以降西側半導体メーカーがファーウェイ向けに出荷できなくなることで、OSAT(半導体後工程専門業者)の半導体デバイス需給と半導体設備投資に対する見方が慎重になっており、そのため、すでに下降局面入りしているSoCテスタ(ロジックテスタ)の受注が今3Qまで更に悪化するとなっています。そして、SoCテスタ受注が回復に転じるのは今4Qから、業績が回復するのは来1Qからとしています。そのため、会社側は今期は営業減益と予想しています。
ただし、会社側は最近の報道(8月29日付け日経新聞)で、この業績悪化は短期的なものであること、来期2022年3月期には過去最高益を更新する可能性があることを示唆しています。業績悪化が短期で株価の重要な指標になるテスタ受注が今4Qから回復に向かうのであれば、今は投資を検討してもよい時期になっていると思われます。
表6 アドバンテストの業績
レーザーテック
2020年6月期からEUV用マスク欠陥検査装置(EUV光を使うACTIS A150。光源にEUV光を使うタイプはレーザーテックが市場シェア100%)の出荷を開始しているもようであり、3ナノ時代(2021年から3ナノのパイロットプラントへの投資が始まる)に量産ラインで本格的に使われるもようです。KLAが2022~2023年にEUVマスク欠陥検査装置の試作機を投入するもようですが、顧客による評価に1~2年かかるため、今後3~5年はこの分野はレーザーテックの独壇場になると思われます。
すなわち、3ナノライン向けのEUVマスク欠陥検査装置でEUV光を使うタイプのものは、レーザーテックが市場シェア100%を維持する可能性が高く、その実績を持って2ナノに向かうと思われるため、2ナノ時代もKLAに対して優位に立つ可能性があります。
EUV用マスクブランクス欠陥検査装置でも、レーザーテックの独占状態が続いているもようです。
表7 レーザーテックの業績
SCREENホールディングス
業績の詳細は、楽天証券投資WEEKLY2020年8月21日号を参照してください。2019年3月期、2020年3月期と業績悪化が続きましたが、業績悪化要因となった部品調達の不具合(調達価格が同業他社よりも高かった)、ウェハ洗浄機の試作機のコストアップ(顧客からの手直し要求による)は、すでに解消していると会社側は指摘しています。今期会社予想業績が実現できるならば、業績は本格回復へ向かっていると考えてよいと思われます。
表8 SCREENホールディングスの業績
ディスコ
ディスコの業績は、おおむね世界の半導体工場の稼働率に沿って変動しています。今後世界の半導体出荷金額が本格的に回復するか、先端ロジック半導体、NANDの生産増加に続いて、DRAM生産も回復に向かうならば、ディスコの業績も回復に転じると思われます。
表9 ディスコの業績
本レポートに掲載した銘柄:東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、レーザーテック(6920)、SCREENホールディングス(7735)、ディスコ(6146)