老後資金を貯めるためのリスク

 投資を行えば、元本割れのリスクを負いますが、目標の年率4.08%のリターンを達成するチャンスはあります。そして長期投資の場合は、リスクもおさえることができます。

 ただし、投資が上手くいかなかった場合もありえます。そうなった場合は、投資元本を割り込み、必要な老後資金を大幅に下回ってしまい、老後の生活が資金ショートに陥るリスクが高まります。

 一方、銀行預金で運用すると、元本割れのリスクを回避する代償として、最初から目標リターンを達成できる見込みはなくなります。今ほぼゼロの預金金利が目標の年率4.08%まで上昇することは期待できないからです。

 毎月3万円ずつ貯金しても老後を迎えたときの保有資産は目標の3,000万円を大幅に下回る金額(※予測値は目標の半分1,500万円)にしかならないことが最初から分かっているため、若いときから消費支出をとにかく減らし、少しでも預金残高を増やす努力をする必要があります。

 老後の生活水準は、預金残高次第であり、その範囲内でやりくりするしかありません。やりくりできなければ、資金ショートとなります。

「投資がセオリーどおりに上手くいけば、老後資金の目標額を確保できそうな半面、失敗すれば、老後の資金ショートの可能性が大幅に高まる戦略」を取るか、「銀行預金で運用し、最初から老後の資金が足りない前提でスタートし、そのリスクを消費抑制による徹底した預金残高の積み上げで時間をかけて削減していく戦略」を取るか、最後は選択の問題です。

最良を希望せよ、そして最悪に備えよ

 英語で次のようなことわざがあります。

Hope for the best, and prepare for the worst.

 日本語に訳すと、最良を希望せよ、そして最悪に備えよ、という意味です。

 何を最良とするか、何を最悪とするかは、個人個人で異なると思います。

 投資が目標リターンを達成できることを最良として期待し、目標リターンを達成できず、投資元本も損失で減ってしまうことを最悪として、それに備えるという人もいるでしょう。最悪に備えるには、時間分散を図る積立投資で投資をする、消費支出を切り詰め、少しでも別に貯金しておくなどの対策が取れると思います。

 銀行預金による運用で元本割れしないことを最良として期待し、老後の資金ショートを最悪として、それに備える、という人もいるでしょう。最悪に備えるには、消費支出を少しでも切り詰め、可能な限り頑張って貯金する、あるいは老後の生活費を抑制し資産の目減りを少しでも遅らせるという対策が考えられます。

 老後資金を作る方法に答えはありませんが、自分自身にとって、何が最良であり、何が最悪であるかを考えてみると、自分に合った資産の作り方が見えてくるのではないでしょうか。