雇用統計のうち、非農業部門雇用者数、失業率が重要

 でも、なぜ米国の非農業部門雇用者数と失業率に注目するのでしょうか。それは米国が世界経済の中心にあるからです。世界GDPに占める米国の割合は24.6%と4分の1にもなっています(2017年名目GDP。出所:IMF[国際通貨基金])。つまり、米国が不況になると、全世界が悪影響を受けるため、世界中が注目しているのです。

1:米国のGDPを支える個人消費

 米国は雇用流動性が高く、転職・退職・解雇が日本より気軽に行われています。そのため、1カ月でも就業数や失業率に変化が出ます。

「働いている人が減っていれば、所得のある人も減り、物を買う人が減り、不景気になる」、逆に「働いている人が増えていれば、所得のある人も増え、物を買う人が増え、好景気になる」という経済動向が想定されるのです。

 さらにもう一つ大きな点は、米国のGDP(国内総生産)が個人消費に支えられていることがあります。GDPに占める個人消費の割合は日本が約60%、中国が約35%、米国は約70%です。米国経済は個人消費に左右される度合いが高いため、失業率が低く、非農業部門雇用者数が増えれば、景気が良く循環しているということになるのです。

2:FRBが雇用統計を重視して政策金利を決定する

 このように雇用統計は重要な経済指標ですが、FRB(米連邦準備制度理事会)は、この雇用統計に注視して、米国の重要な政策金利を決めています。利上げをする、しないという政策金利の決定は、株式、為替、債券などあらゆるマーケットに影響を及ぼします。その利上げ判断の基になるデータの一つが雇用統計なのです。