一方で、時間という限られたリソースをたくさん持っている若い人たちは、いろいろなことにチャレンジできます。
ここで大事なことは、「時間」「能力」「お金」という資産、リソースは概ね交換可能であるということです。大学生の息子には、「今、君がバイトで得られるものは1時間あたり1000円だろうが、その1時間を英検1級を取ることに費やし、クリアしたなら、君のバイト料は3倍以上に跳ね上がるよ」と言っています。
子供のうちは「お金」という要素は、これら3つの中で切り離されていて、親が面倒を見てくれます。子供のうちにやる勉強などの活動は「時間」を「能力」に変える活動なのです。大人になってから、その「能力」と「時間」を「お金」に変えて生活するのです。「お金」だけが切り離されていた子供から、大学生、社会人になるにつれて、この3つの兌換(だかん)性は上がっていきます。事業に成功すれば、お金で時間を買うこともある程度は可能になります。残念ながら老いてしまうと自らの「才能」そのものの改善余地は少なくなってきますが……。
このように考えると社会人になって初めてやることは「貯金」ではありません。大学卒業まで学んで身につけた「能力」で食っていけると信じているのなら、世の中を甘く見ているということです。したがって、若くて時間がある若いビジネスパーソンがまずやらなければならないこと、やり続けなければならないこと、それは「自分への投資」です。継続的に自己研鑽することで、「自分が働く」場合の単価を上げるのです。「自分が働く」場合の選択肢、つまり転職や副業の選択肢を広げるのです。
もちろん、ある程度の貯金は必要です。だいたい1年間くらい無職になっても大丈夫なくらいの現金があればよいでしょう。この人口減少の日本において、職をえらばなければ何をしてでも生きていくことはできます。日本は国民皆保険制度を含め、社会保障制度も充実しています。心配することなく、アップサイドを狙う方が絶対に得です。ものすごいスピードで動いているビジネスの世界で英語、会計、税務、マーケティングでも何でも構いません。自分が持っているスキルセットの中から、これから自分が歩んでいくビジネスパーソンの人生に照らしてこれが足りない、あれが足りないというスキルがあったら、それをひたすら磨いて下さい。
投資対象はそういったビジネススキルだけではありません。どんどん見聞を深めるべく旅行をしたり、いろんな体験をしたりしてください。「はじめに」でも述べましたが、世界のビジネスエリートは、「自分の言葉で語れる」ことが不可欠です。それには様々なビジネス経験、人生の経験を自分事として捉える主体性が最も重要なのです。それが20代のうちにやっておくべき投資です。とにかく人間力を含めた自分の能力を高める自己研鑽にお金を注ぎ込みましょう。
そうこうしていると、徐々に自分のスキルが向上し、総合力もついてきて、ビジネスがうまく回るようになります。成功体験を積み重ねていけば、上司からの覚えもめでたくなり、どんどん昇進・昇格できるでしょう。当然、毎月のお給料も増えていきます。そこで生まれた経済的な余剰分を、今度は余すことなく株式投資に回すのです。そうすることによって、自分の働きによるキャッシュフローだけでなく、他人の労働によるキャッシュフローも将来的に得られるようになります。
たとえば、自分の仕事が飲食業だとして、その仕事だけに専念していたら、得られるキャッシュフローは飲食店の売上でしかありませんが、日本電産の株式に投資すれば、日本電産のモーター事業からのキャッシュフローも得られることになります。自分自身が働ける時間は8時間でも、株式に投資することによって、自分が属している産業・事業・企業とは異なるところからお金が入ってくることになります。時間あたりの効率性は格段に増すことになるのは言うまでもなく、そのキャッシュフローの源泉を分散することができるのです。