米国株式市場に「黄金の20年代」が再び到来したのか
米国株式の先行きについては、11月大統領選挙(+議会選挙)の行方を巡る不透明感や米中対立の激化次第で、9月から10月にかけ一時的な株価調整も想定しています。ただ、選挙が終了(リスクイベントを消化)する前後から年末に向けての株価反発(年末高)を見込んでいます。上述したファンダメンタルズの見通しにもとづき、短期的なリスク(リターンのブレ)を乗り越える強気相場が続くと考えています。
本稿は、来年(2021年)以降の米国株式について展望してみたいと思います。そこで参考となりそうな事象として「黄金の20年代」と呼ばれる1920年代の米国株式市場実績に注目します。
図表3は、米ダウ平均の1920~1929年までの10年推移を振り返ったものです。1918年に発生した「スペイン風邪」は、今年の新型コロナよりも時間をかけて「パンデミック」(世界的大流行)に至りました。医療・治療技術は現代と比べ未発達で、スペイン風邪に感染した世界累計人口は約5億人に達し、1921年の終息を迎えるまで累計5,000万人が死亡したとされています。第1次世界大戦(1914~1918年)の影響を受けた経済的な後遺症もあり、1920年代当初の米国株式は低迷。1921年に底入れして以降、ダウ平均が株式暴落に直面した1929年9月まで上昇基調をたどりました。1929年9月までの「黄金の20年代」に米ダウ平均は約3.5倍となり、年率換算すると平均14%ずつ株価が上昇したことになります。
<図表3>「黄金の20年代」における米ダウ平均を振り返る
1920年代に米国経済と株式市場の成長をリードしたのがイノベーション(技術革新)でした。1920年に開始された商業放送開始でラジオが普及。通信手段として電話が普及しました。文化面ではジャズ音楽が広まり、工業分野ではフォードが1921年に量産型乗用車(T型フォード)の「年間生産100万台」を達成しました。一般国民に自動車が普及したことで高速道路の建設が進み、都市部では地下鉄や上下水道などのインフラ(社会的基盤)が整備。産業の発展と個人消費の拡大に寄与しました。1920年8月に認められた女性参政権(選挙権)を契機に女性の社会参加も進みました。
現在と当時では経済情勢も外部環境も異なります。ただ、今回の「20年代」もパンデミックでスタートした事象が似ています。特に、「コロナ禍」が社会や産業のデジタル(オンライン)化を加速させ、バイオテクノロジーを中心とする医療分野や「抗ウイルス」に寄与する進展が期待されています。100年前の「20年代」と異なるのは、「グローバリゼーション」と「情報ネットワーク化」が格段に進歩していることです。したがって、ウイルスの治療や予防に関わる技術革新や普及が加速されることも期待できます。
前回の「黄金の20年代」は1929年9月の株価暴落を契機とする世界大恐慌入りで終わりました。「2020年代の米国株式市場」は1920年代より時間軸を短縮しながら慎重な成長を探る可能性が高いと考えられます。「黄金の20年代」が繰り返されるにしても、バブル醸成や金利の反転上昇を見極めつつ、株式が急落するリスクを意識した「長期分散投資」を実践していくことが大切となりそうです。