米国株式が最高値を更新-ナスダック主力株が再びけん引

 米国株式市場の動向を示すS&P500指数(時価総額加重平均指数)は18日に3,389ポイントに上昇し終値ベースの最高値を更新しました。2月19日に付けた最高値を181日(約6カ月)ぶりに更新し、3月23日の最安値からは5割強の上昇となりました。米国市場の歴史上で「最短に終わった弱気相場」を経た強気相場を確認したと注目されています。17日より2日連続で最高値を更新したナスダック総合指数やナスダック100指数を構成する主力IT株が株高をけん引しています(図表1)。

 コロナ危機に対応したFRB(米連邦準備制度理事会)と米国政府の大規模資金供給(過剰流動性)に加え、「景気と業績は第2Q(4-6月期)にボトムをつけた」との先行き回復見通しが株高の背景です。図表2が示すS&P500指数ベースのEPS(1株当り利益)動向によると、2020年・予想EPS(市場予想平均)は129.24と前年比減益(▲15.2%)となりそうですが、2021年のEPSは164.42と増益転換(+27.2%)し最高益を更新する見通しです。デジタルシフト需要で収益成長期待が強いナスダック100指数ベースのEPSは2020年でさえ増益を継続。2020年も2021年も2022年も最高益を更新する見通しです。コロナ禍のニューノーマル(新常態)が「ニューエコノミー(デジタル化を中核とした経済成長)」の原動力であることを示唆するかのようです。

 投資銀行で世界最大手のゴールドマンサックスグループは17日、「2020年末のS&P500指数見通しを(従来予想の)3,000ポイントから3,600ポイントに上方修正した」と公表し注目されました。

<図表1>ナスダック主導でS&P500指数は最高値を更新

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2016年初~2020年8月19日)

<図表2>ナスダック100指数の業績見通しは「成長期待」が強い

*2020年から2022年の予想EPSは市場予想平均(Bloomberg集計)
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年8月19日)

米国株式市場に「黄金の20年代」が再び到来したのか

 米国株式の先行きについては、11月大統領選挙(+議会選挙)の行方を巡る不透明感や米中対立の激化次第で、9月から10月にかけ一時的な株価調整も想定しています。ただ、選挙が終了(リスクイベントを消化)する前後から年末に向けての株価反発(年末高)を見込んでいます。上述したファンダメンタルズの見通しにもとづき、短期的なリスク(リターンのブレ)を乗り越える強気相場が続くと考えています。

 本稿は、来年(2021年)以降の米国株式について展望してみたいと思います。そこで参考となりそうな事象として「黄金の20年代」と呼ばれる1920年代の米国株式市場実績に注目します。

 図表3は、米ダウ平均の1920~1929年までの10年推移を振り返ったものです。1918年に発生した「スペイン風邪」は、今年の新型コロナよりも時間をかけて「パンデミック」(世界的大流行)に至りました。医療・治療技術は現代と比べ未発達で、スペイン風邪に感染した世界累計人口は約5億人に達し、1921年の終息を迎えるまで累計5,000万人が死亡したとされています。第1次世界大戦(1914~1918年)の影響を受けた経済的な後遺症もあり、1920年代当初の米国株式は低迷。1921年に底入れして以降、ダウ平均が株式暴落に直面した1929年9月まで上昇基調をたどりました。1929年9月までの「黄金の20年代」に米ダウ平均は約3.5倍となり、年率換算すると平均14%ずつ株価が上昇したことになります。

<図表3>「黄金の20年代」における米ダウ平均を振り返る

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1920年初~1929年末)

 1920年代に米国経済と株式市場の成長をリードしたのがイノベーション(技術革新)でした。1920年に開始された商業放送開始でラジオが普及。通信手段として電話が普及しました。文化面ではジャズ音楽が広まり、工業分野ではフォードが1921年に量産型乗用車(T型フォード)の「年間生産100万台」を達成しました。一般国民に自動車が普及したことで高速道路の建設が進み、都市部では地下鉄や上下水道などのインフラ(社会的基盤)が整備。産業の発展と個人消費の拡大に寄与しました。1920年8月に認められた女性参政権(選挙権)を契機に女性の社会参加も進みました。

 現在と当時では経済情勢も外部環境も異なります。ただ、今回の「20年代」もパンデミックでスタートした事象が似ています。特に、「コロナ禍」が社会や産業のデジタル(オンライン)化を加速させ、バイオテクノロジーを中心とする医療分野や「抗ウイルス」に寄与する進展が期待されています。100年前の「20年代」と異なるのは、「グローバリゼーション」と「情報ネットワーク化」が格段に進歩していることです。したがって、ウイルスの治療や予防に関わる技術革新や普及が加速されることも期待できます。

 前回の「黄金の20年代」は1929年9月の株価暴落を契機とする世界大恐慌入りで終わりました。「2020年代の米国株式市場」は1920年代より時間軸を短縮しながら慎重な成長を探る可能性が高いと考えられます。「黄金の20年代」が繰り返されるにしても、バブル醸成や金利の反転上昇を見極めつつ、株式が急落するリスクを意識した「長期分散投資」を実践していくことが大切となりそうです。

国内市場で注目したい「ニューエコノミー関連株」の優勢

 一方、国内市場でも「ニューエコノミー関連株」の優勢が顕著となっています。図表4は、JANE(ジャパン・ニューエコノミー・インデックス)とTOPIX(東証株価指数)の推移を比較したものです。JANEとは「新経連株価指数(Japan New Economy Index)」の略称で、一般社団法人・新経済連盟(略称は新経連)が2019年6月20日に発表した新しい株価指数です。

 新経連は、イノベーション(創造と革新)、アントレプレナーシップ(起業家精神)、グローバリゼーション(国際的競争力の強化)の促進を目的に設立され、会員企業にIT関連企業やベンチャー企業が多いことで知られています。会員企業のうち約100社が東証、東証マザーズ、ジャスダックに上場され、JANEはこれらのうち約100銘柄で構成される浮動株調整時価総額加重平均指数となっています(1銘柄の構成比率上限は3%/起算日は2012年6月1日)。

 図表4は、2013年初を起点(100)にしたJANEとTOPIXの総収益パフォーマンスを比較したものです。TOPIXに対するJANEの相対的な優勢と復元力に注目したいと思います。

<図表4>ジャパン・ニューエコノミー・インデックス(JANE)の相対推移

*JANEとTOPIXのパフォーマンスはともに配当込み総収益指数で比較
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2013年初~2020年8月19日)

 IT(デジタル)革命やニュービジネスの成長期待がJANEの優勢を支えていると考えられます。JANEを構成する上位ウエイト銘柄としてはメルカリ、ニトリホールディングス、サイバーエージェント、富士通などがあります。こうしたJANEに連動する投資成果を目指すインデックスファンド(追加型公募投信)としては「楽天・新経連株価指数ファンド」(略称:JANEインデックス/運用:楽天投信投資顧問)があります。国内でもコロナ禍を契機にニューエコノミー化(社会・経済・産業の変革)が加速していくと考えられます。

 図表5に同ファンドの設定来パフォーマンスを示しました。一口当たりNAV(基準価額)は1万1,643円と本年2月27日の設定来で16%強上昇しています(8月19日時点)。短期的な変動を交えつつ、中長期でTOPIX(市場平均)よりも高い成長を示していくものと考えています。

<図表5>「JANEインデックス」の設定来パフォーマンス

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年2月27~8月19日)

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