本レポートでは、主要な暗号資産であるビットコイン、イーサリアムと、金や原油などのコモディティ、通貨、株価指数を比較します。騰落率、価格推移などを切り口に、比較をしながら、ビットコイン、イーサリアムの今後を展望します。

 本コンテンツで参照するのは、ビットコイン、イーサリアム(以上、暗号資産)、日経225、マザーズ指数(以上、株価指数)金、銀、プラチナ、パラジウム、原油、トウモロコシ、天然ゴム(以上、コモディティ)の、合計12銘柄です(すべて円建て)。

騰落率:年初来の騰落率は、イーサリアムがダントツ1位。金、銀も健闘

 まずは、年初(2020年1月6日)と7月28日の騰落率です。このおよそ7カ月間、最も上昇率が高かったのは、イーサリアムでした。+116.8%はダントツの1位です。

図:ビットコインとイーサリアム、各種銘柄の騰落率
  2020年1月6日と7月28日を比較 日足の終値で計算

出所:楽天ウォレット、マーケットスピードⅡのデータをもとに筆者作成

 

 ビットコインが2位、次いで、銀、金の上昇が目立ちました。ベンチャー企業が中心の新興市場の全体的な動向を示す株価指数であるマザーズ指数は上昇したものの、日本経済の先行指標と言われる日経225や、産業用の用途がメインのプラチナ、天然ゴム、原油などの景気動向に連動する傾向があるコモディティ(商品)は下落しました。

 全体的には、暗号資産と通貨の側面をもったコモディティが上昇し、景気動向に連想する傾向がある資産が下落した、と言えます。

 この7カ月間、振り返ってみれば、世界に新型コロナウイルスの感染が拡大し、さまざまな分野で変革が起きました。ウイルスの感染拡大が収まらないことや、新しい生活様式を受け入れることへの不安、懸念、心配、焦り、いら立ちなどが募り、感染拡大前に比べれば、人々の心は不安定化していると言えます。

 一般大衆の間で心配事が蓄積すれば、やがて大きな不安心理の塊となり、市場を揺さぶる存在となります。

 暗号資産と通貨の側面を持ったコモディティの共通点は、“国籍を持たない通貨”です。不安心理が拡大する中、そのような通貨の価格が上昇したことは、一般大衆の不安が、国の信用を背景とした通貨(円、ドル、ポンドなどの一般的な通貨)へ波及していることを示唆していると、考えられます。