ワシントン情勢の不透明感が潜在的なリスク要因に

 ただ、上記したウォール・ストリート(金融市場)でのコンセンサス(期待)とメイン・ストリート(実体経済)の現実が乖離しているとの指摘もあります。5日に発表された米・雇用統計(5月分)で失業率はやや低下した(14.7%→13.3%)ものの、黒人の失業率は上昇しました(16.7%→16.8%)。

 こうしたなか、米中西部ミネソタ州ミネアポリスで5月25日に発生した白人警官による黒人男性暴行死事件を発端とした抗議デモが拡大しています。このデモは従来からあったBLM(Black Lives Matter)と呼ばれる「人種差別反対運動」と結びつき一部が暴徒化。トランプ大統領が連邦軍の出動を示唆する強硬姿勢を表明したことに抗議デモの反発が強まっています。

 白人の若者もデモに参加し、「経済格差や人種差別に向き合おうとしない大統領」への不満で抗議デモが「反トランプ色」を濃くしています。

 大統領の姿勢には共和党(与党)内からも反発が出ており、マティス前国防長官、ブッシュ元大統領、パウエル元国務長官、ロムニー上院議員などが大統領を批判。再選を支持しない(あるいは民主党候補に投票する)との意向を表明しています。

 図表2は、11月3日に実施される大統領選挙について、世論調査平均にもとづく直近の「支持率」と「当選予想確率」を1カ月前の水準と比較した一覧です。トランプ大統領は劣勢に立たされており、民主党大会(8月17日の週)で大統領候補指名が確実視されているバイデン候補(元副大統領)が優勢となっています。

 コロナ危機に対する初動の遅れ、失業率上昇、人種差別反対デモへの対応失敗(支持基盤である白人保守層を意識し過ぎた強硬姿勢)が影響しているとされます。

<図表2>「トランプ大統領の再選失敗」が視野に入ってきた?

*指名予定=共和党も民主党も8月の党大会で大統領候補者を指名する見込み *支持率(全米平均)=Real Clear Politics集計による全米世論調査平均 *当選予想確率=U.S.PredictIt試算による当選予想確率(Implied Probability) 出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年6月10日)