今週の見通し

 先週、原油が上昇率1位となったのは、OPEC総会を前に、減産を強化する期待が高まったことが主な要因とみられます。また、それに加え、主要株価指数の上昇による、石油消費の拡大期待が膨らんだことも、要因になったと考えられます。

 一方、米中貿易戦争が激化していること、新型コロナウイルスの起源をめぐる小競り合いが起きていること、国家安全法をめぐり香港を舞台に政治的対立が深まっていることなど、引き続き、米中対立については、解決の糸口を見出しにくい状況が続いています。

 また、ブラジルなどで、新型コロナウイルスの感染者の増加が止まっていない国が多数存在することが原因で、先進国経済が回復するために欠かせない貿易の回復に、遅れが生じる懸念があります。

 加えて、米国国内で起きた黒人死亡事件をきっかけとしたデモが米国のみならず、英国など国を超えて広がっていることも、足元、世界が抱える大きな懸念と言えます。

 それでも、株式市場が上値を伸ばすのは、なぜなのでしょうか? その理由の一つに、投資家が「米国に対し、明るい未来を描いている」ことが挙げられると、筆者は考えています。

 2020年4月、米国の雇用情勢は戦後最悪まで悪化しました。米国の石油の消費量も急減しました。最悪の4月だったわけです。

 しかし、4月が最悪だったからこそ、その悪さがかえって、将来に向けた改善余地となり、4月よりは5月、5月よりは6月と、希望を見出しやすくなっているとみられます。

 具体的に、先週公表された数字がそれを裏付けています。例えば、先週公表された米雇用統計は、前月よりも事前予想よりも、良い内容でした。また、先週の週間石油統計では、米国の石油の消費は4月下旬を底として、5月下旬にかけて回復したことが明らかになりました。

 データの裏付けもあり、雇用も石油消費も、4月が最悪期だったという認識が、時間の経過とともに、強くなってきているとみられます。この事こそ、“4月が最悪で、今後は少しずつ回復していく”、と楽観的になれる要因だと筆者は考えています。

 今後、米国の雇用情勢や石油の消費だけでなく、幅広い経済指標で、“4月最悪期”が確認されるようになれば、さらに市場は楽観的になり、株高が進み、原油にも上昇圧力がかかる可能性があります。

 まずは今週公表される経済指標に、注目です。

 6月8日(月)は、日本の4月の国際収支・貿易収支、ドイツの4月鉱工業生産と4月貿易収支、6月9日(火)は、フランスの4月貿易収支と4月鉱工業生産指数、6月12日(金)は、英国の4月の鉱工業生産指数、ユーロ圏の4月の鉱工業生産が公表されます。

 また、6月8日(月)には、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁の発言、6月10日(水)に、FOMC(米連邦公開市場委員会)終了後、政策金利発表、FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長の定例記者会見があり、主要地域の金融当局が足元の情勢や今後の動向をどのように見ているのかが示されるため注目です。

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