ガバナンスについて

 この保有先企業が富を生み続けるのかという本質的な命題は、企業のガバナンスにも当然に適用されます。本稿の中でバフェット氏は、自分のお金で自社の株式も買わないような「独立」社外取締役を、飼い主(CEO)の言いなりになるペット犬、コッカー・スパニエルと痛烈に批判しています。「これらの取締役は善人だけれど、ビジネスに向いていない(not their game)」との批判は、痛烈すぎて耳を覆いたくなりますが、今までの長いキャリアの中で21社の取締役を経験してきたバフェット氏の言葉だけに重みがあります。

 日本においても、コーポレート・ガバナンス・コードが導入され、社外取締役の役割が注目されるようになりました。社外取締役の割合に気をとられ、実態面に目が向いているとは言い難い状況ではありますが、一生懸命に取り組んでいることは事実です。しかし、株主ガバナンスが進んでいるはずの米国において、独立社外取締役制度に大きな問題があるとするバフェット氏の指摘が正しいならば、日本企業が現在必死に取り組んでいることは本当に正しい方向なのでしょうか? 今の方向性は「仏作って魂入れず」の典型だと危惧します。むしろガバナンス制度だけが立派な企業の不祥事が頻発している事態をもっと謙虚に精査するべきだと思います。結局は、制度ではなくて中身なのだとしか言いようがありません。それをきちっと主体的に評価できるのは、オーナーシップをもった投資家とその意向を受けた運用者だけでしょう。

 ハーバード大学のステファン・デイビス等の著作「What they do with your money(2016年)」を花岡氏(きんざい)、杉山氏(明治安田アセットマネジメント)とともに訳した本が先日出版されました(邦題「金融システム批判・序説」)。この本の趣旨は、年金受給者などの最終投資家から富を生む企業への資金の流れ(インベストメントチェーン)の中間にある運用者、証券会社、コンサルタント・・・といった多くの仲介業者が、最終受益者のためではなく自らの給料のために働いている、という金融システムに対する痛切な批判です。相当のページをバフェット氏のオーナーシップにこだわる投資哲学に割いており、そしてこの無用に伸び切ったインベストメントチェーンを改善する一つの解決策が「オーナーシップの復権」であると主張しているのです。ガバナンスを考える上でも原則に立ち返るところからスタートしたいものです。