話は脱線して新型コロナウイルスについて:私見

 年初から新型コロナウイルスの世界的な感染拡大にともない、世界の金融市場も大きな影響が出てきています。2008年のリーマンショックは、生活習慣病の人がいきなり心臓血管をやられて、体中の器官に血液を送ることができなくなったような症状でしたが、世界中の中央銀行の金融緩和と米国政府の素早い患部摘出手術により比較的短期間に世界の産業は正常化しました。今回のコロナショックは、心臓血管は問題なく機能しているのだけれど、手足の方が良く分からないウイルスに侵されて、恐怖のために動けなくなっているような症状です。人類とウイルスの戦いの長い歴史を考察すれば、悲観しすぎる必要はないとは思うものの、何より人は目の前で起こる恐怖に弱い生き物であり、その本能が事実をありのままに見ることを妨げます。またこの10年で発展した情報技術によって進んだ「個人のメディア化」によって、悪気のない個人によるドラマチックな情報がパンデミック化していることも付け加えなければなりません。

 ただ、一つ言えることは、新型コロナウイルスは未経験ではあるものの、それで世界が終わるほどのウイルスではなさそうだということです。マーケットへの影響に話を戻すと、時間の経過とともに必ず収束するタイプの混乱なのですが、悪いことに心臓にカンフル剤を打っても(=金融緩和)、手足がウイルスに感染しているために直ぐには良くなりません。そして治癒にかかる時間も患部によって跛行性が現れるでしょう。言うならば、数ヶ月すると「左足くるぶし(eg,インターネット関連等)はもうピンピンしているのだけれど、右手人差し指(eg,旅行産業等)はまだ治らないんだよね」といった感じです。予後が良い患部と悪い患部に分かれるでしょう。まさに事業選択の眼が問われる局面と言えそうです。いずれにしても一番重要なことは、ウイルスが収束したあとで、投資先の事業が将来的にも富を生み続けることができるのか、ということです。