急がれるワクチン開発
医学が未発達だった時代、致死率の高い感染症が大流行して、終息するには長い年月がかかりました。回復して免疫【注】を持つ人が、人口の6~7割を占めるまで、感染に歯止めがかかりませんでした。
【注】一般に感染症は、感染して回復すると、体内に免疫(病原ウイルスを排除する抗体)ができるため、一度かかると二度はかからない傾向。
例えば、1918年(第一次世界大戦末期)、世界的に大流行したスペイン風邪(当時は風邪と考えられていたが実際はインフルエンザ)がそうです。世界中で、何百万という死者を出し、生き残った人々が免疫を持つことで、やっと終息に向かいました。
新型コロナウイルスも、一度感染して回復したヒトには免疫ができるので、二度はかからないと考えられています(注:これは厳密に証明されたわけではありません。現時点ではWHO(世界保健機構)は「免疫の保証なし」と警告しています)。人口の6~7割が免疫を持つまで、経済を動かしながら感染症と戦うしかない、との考えもあります。
ちなみに、ニューヨーク州が行った「抗体検査」(免疫を持っているか否かの検査)では、まだ少数の標本調査に過ぎませんが、ニューヨーク市内の約2割が既に抗体を持っているとの試算が出ています。感染が終息する6割にまだ遠いが、それでも「知らないうちに感染し回復し、免疫を持っている人」が意外に多いことがわかったことは朗報です。
医学が発達した今日、たくさんの人が感染して集団免疫ができるのをただ待つわけにはいきません。米国、中国、欧州では、国家の総力をあげた予防用ワクチン開発が進んでいます。一刻も早く、ワクチンが開発され、投与によって免疫を獲得する人が人口の6割を超えることが望まれます。
日本は出遅れていますが、米国・欧州・中国では新型コロナワクチンの開発ラッシュとなっています。通常だと5年以上かかるワクチン開発を、1年~1年半で実現するペースで開発が進んでいます。米国は、来年1月にも、数億人に投与できるワクチンを開発する目標を持っています(そんなに早くできるはずないという専門家もいます)。
過去のスペイン風邪のように、何百万人の死者を出さないでも、いずれはワクチンの普及によって新型コロナウイルスを克服できるようになると考えられます。ただし、ワクチンが完成するまで、経済を止め続けて待つことはできません。感染の二次拡大と戦いならば、どう経済を動かしていくかが、焦点になります。