「新型コロナウイルス後」の市場を考えてみる

 さてそれを前提に、「新型コロナウイルス後」の市場を考えてみたいと思います。ここ数十年で、市場には様々な「ショック」と呼ばれるイベントがありました。その中で今回の新型コロナウイルスを位置付けるとすれば、「少し長めの一時的ショック」に他ならないと思います。何故ならリーマンショックを含め、歴史的にアメリカに約10年に1回に訪れるバランスシート調整のような、需要を先食いしてしまってその回復に数年かかるような性質のものではなく、需要は一時的に人工的に止められているだけであって、これは新型コロナウイルスの収束と共に必ず戻る性質のものであるからです。

 もちろん一時的に失業率は急上昇し、経済成長率は大きく落ち込みますが、これらも新型コロナウイルスの収束を先行指標として回復することはほぼ確実であり、バランスシート調整のような厄介な問題ではありません。リーマンショック時のようなモラルハザードが無い分、景気対策も2兆ドルというとんでもない金額で実施できますし(アメリカのこの数字に粉飾決算はありません)、連銀はほぼ無制限の流動性供給に乗り出すことが出来ます。1日にダウが1,000ドル以上も上下する状況が続く中、短期的な動向を予想する事にあまり意味は無いと思いますが、少し先を見た場合、史上最大規模の財政・金融政策が実行される中、株式が再び高値を回復するのに1年もかかることはないのではないかと考えています。

 むしろこれだけ無制限に流動性が供給され、財政政策が伴っている中、遂にインフレが起こる可能性が高まってきたと見るべきでしょう。インフレ懸念から長期金利が上昇しても短期金利は比較的長い間据え置かれる可能性が高く、イールドカーブの勾配が急になり、不良債権の増加が懸念される金融セクターはむしろ狙い目かと思います。また世界的に積極的な財政・金融政策が発動され、通貨の相対的価値が下がる中、ゴールド(金)は高値を目指すのではないでしょうか。まだまだ落ち着かない相場展開が続くと思いますが、このように市場が冷静さを失っている時こそ、色々な所に意外な投資機会が提供されている段階でもあると考えています。

(2020年4月9日記)