予防薬(ワクチン)は、実現するか?

 新型コロナは、感染力が強いので、感染者がいるかもしれない地域に出かけることが難しくなります。ただし、予防に有効なワクチンを投与すれば、感染を気にしないで良くなります。たくさんの人に、新型コロナのワクチンを提供できれば、それで社会的な感染の広がりを押さえられ、経済が正常化します。そういうワクチンの開発は可能でしょうか?

 今、世界中で、新型コロナのワクチン開発が一斉に動き出しています。半年~1年以内に、利用可能なワクチンが出てくると考えられます。

 ワクチンの開発には通常、長い時間と巨額の資金がかかります。上市(市場に出し、市販すること)しても、採算がとれるかどうか、分かりません。したがって、民間の製薬会社は、ワクチン開発に二の足を踏みます。早くから新型コロナが世界的に流行するリスクがあると警鐘を鳴らす専門家がいたのに、ワクチンの開発が進んでいなかったのは、そうした採算面の懸念があったからです。

 今、新型コロナのワクチン開発に、世界各国のバックアップが出ているので、急速に開発が進展する見込みです。通常、何年にも及ぶ臨床試験も、特例として短期間で済ませる可能性が出ています。

 ところで、ワクチンには、いろいろな種類があります。代表的なのは、【1】生ワクチンと、【2】DNAワクチンです。早期に実現しそうなのは、DNAワクチンの方です。

【1】生ワクチン

 弱毒化したウイルス(ワクチン)を投与し、それを克服させることで、体内に免疫を作らせるのが、生ワクチンです。新型コロナでも生ワクチンの開発が進んでいます。

 ただし、1つ問題があります。安全性が100%担保されているわけでないことです。つまり生ワクチンを投与した人の中の、ごく限られた割合の人に、軽くその病気の症状があらわれることがあります。

 安全性を高めるために、不活性化したウイルスを使ったワクチンもあります。不活性ワクチンならば、安全性は高まりますが、それでも100%安全とは言えません。なお、不活性ワクチンでは、1回の接種では不十分で、免疫を持つために複数回の接種が必要になることがあります。

【2】    DNAワクチン

 ウイルスそのものを使わず、ウイルスのDNA情報だけ使って生成するのが、DNAワクチンです。ウイルスそのものを使わないので、安全性はきわめて高く、生産にかかるコストも低く抑えられます。

 秋ごろまでには、実用化が進むと考えられています。まず、感染のリスクの高い仕事についている人(医療関係者)から投与をはじめ、次いで、感染すると重篤化するリスクを抱える人(高齢者・既往症のある人)から優先して投与する計画が進められています。

 安全面で優れていますが、1つ課題があります。新型コロナに絶対感染しなくなるという保証はないことです。感染しにくくなり、仮に感染しても重篤化しにくくなることはわかっていますが、「一度感染して回復したヒト」が持つ免疫と同等の効果が得られるわけではないと考えられています。