投機筋による、日経平均先物の売り建てが積み上がっていた

 先週は、日経平均先物に巨額の売り建てポジションを持っていた投機筋(主に外国人投資家)が、慌てて先物を買い戻したと推測されます。

 そのことが、先々週末(3月19日)時点の、裁定売買残高から、分かります。詳しい説明は割愛しますが、裁定買い残の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「買い建て」の変化が表れています。買い建てが増えると裁定買い残が増え、買い建てが減ると裁定買い残が減ります。

日経平均と裁定買い残の推移:2018年1月4日~2020年3月27日(裁定買い残は2020年3月19日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 上のグラフを見ていただくと分かる通り、裁定買い残高は、2018年初には3.4兆円もありました。この時は、「世界まるごと好景気」と言って良い状況でした。したがって、投機筋は世界景気敏感株である日本株に強気で、日経平均先物の買い建てを大量に保有していたことが分かります。

 ところが、2018年末にかけて、世界景気は急速に悪化しました。投機筋は、日経平均先物を売って、買い建て玉をどんどん減らしていきました。その結果、2020年3月19日時点で、裁定買い残は2,420億円まで、減っています。投機筋は、日経平均先物買い建てをほとんど整理してしまったことが分かります。ここまで減るのは、リーマン・ショックのあった2008年、チャイナ・ショックがあった2016年以来のことです。

 投機筋は先物の買い建てを閉じただけでなく、売り建てを積み上げていました。それが、裁定売り残高の推移に表れています。詳しい説明は割愛しますが、裁定売り残の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れています。売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2020年3月27日(裁定売り残は2020年3月19日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 3月19日現在、裁定売り残高は、1兆7,158億円まで積みあがっています。注目すべきは、3月19日時点で裁定買い残高が2,420億円しかないのに、裁定売り残高が、1兆7,158億円まで増えていることです。売り残が買い残より1兆4,738億円も大きいのです。投機筋が、「日本株が下がることによって利益が得られるポジション」を大幅に積み上げていたことが分かります。

 これはとても珍しいことです。通常は、裁定買い残高が裁定売り残高よりも1兆円以上大きいからです。投機筋は日本株にかなり弱気のポジションを組んでいたことが分かります。

 先週は、日米欧主要国が、なりふり構わぬ財政・金融政策を出してきたことから、一部の投機筋があわてて日経平均先物を買い戻したと推測されます。まだ、統計は出ていませんが、3月27日時点では、裁定売り残高は大幅に減少していると考えられます。